粉ミルク異物混入事件|ザ!世界仰天ニュース

中国・河北省で酪農を営む耿金平は、家族で370頭の乳牛を飼育し原乳を生産していました。そんなある日、彼のおさめた原乳がたんぱく質の量が少ないと検査に引っかかりました。検査したのは取引先である三鹿集団(サンルーしゅうだん)という乳製品製造会社。この時廃棄した原乳は3トンでした。

そんな時、原乳業者の間で広まっていたある噂を耳にしました。それは原乳のたんぱく質を増やすためにメラミンを入れるというもの。メラミンはプラスチックの原料となる化学物質です。強い毒性はありませんが口にできるものではありません。

2007年3月、アメリカでペットフードによる動物の死亡事件が起こっていました。このペットフードにはメラミンが混入されていました。たんぱく質の基準をクリアするために、中国の業者が植物性たんぱく質にメラミンを混入し輸出していたからです。メラミン入りのペットフードを食べた動物たちは腎不全を起こし、100匹以上が命を落としたと報じられました。

一方で、この事件を機にメラミンでたんぱく質の量を偽装できることが知られるようになりました。実は食品中のたんぱく質の量を調べるには窒素の量を測定し、そこから算出します。メラミンには窒素が多く含まれているため、それを入れた原乳はあたかもたんぱく質が多く含まれているように見えるのです。彼らにとっては人体への影響よりも利益の方が大事でした。

耿金平は、メラミンで偽装した原乳を三鹿の工場におろしました。そもそも多量のメラミンが食品中に入ると想定していなかったため、当時原乳の検査でメラミンの有無を調べることはありませんでした。こうして耿金平はメラミン入り原乳を約900トンも販売。売り上げは4000万円以上にもなりました。

安く簡単に手に入るメラミンによるたんぱく質偽装は、原乳業者の間で噂となり、それで作られた粉ミルクが中国全土で販売されました。

この頃、中国の各地の病院では尿路結石の子供が急増していました。赤ちゃんたちには、三鹿(サンルー)の粉ミルクを飲んでいるという共通点がありました。三鹿は年商約1500億円の乳製品製造会社です。中でも粉ミルクは、手頃な価格が母親たちに評判で、生産量は1993年から15年もの間中国でトップでした。さらに、成分が母乳により近い優れた粉ミルクを開発したとして政府から賞をおくられていました。子供たちに異変が起きた親たちからは、三鹿に問い合せが相次いでいました。

最初の苦情から半年後、食品などの成分分析を行う河北省検疫局に三鹿製の粉ミルクが送られ、精密な分析が行われました。1か月後、検査結果にはメラミンの混入が記されていました。

自社の粉ミルクにメラミンが混入されていることを知った三鹿。創業者で三鹿の理事長である田文華は、商品を回収することにしました。しかし、店舗側には異物混入のことは伝えませんでした。

回収したもののメラミンの量を調べると、ものによって混入している量に差があることが分かりました。すると、田文華は1kgあたり10mg以下のものは出荷することにしたのです。優先したのは会社の利益でした。

こうしてメラミン混入を知った後も、三鹿は800トンを超える粉ミルクを販売。7億円以上を売り上げ、200万人以上の乳児の体に異物が取り込まれることになりました。それにより多くの乳児の体内に結石ができてしまいました。

三鹿がメラミン混入を知って1か月後の2008年9月、粉ミルクによる健康被害が相次いでいることを知った国家質検総局は三鹿の調査を開始。ついに原乳の偽装を突き止めました。そして耿金平をはじめとする原乳業者を逮捕しました。

さらに、その後の調査で三鹿以外にも22の食品メーカーから69品目にもおよぶ商品でメラミンの混入が発覚しました。その被害者は分かっているだけでも約30万人、6人の死亡が確認されました。

2008年12月、事件の裁判が開始されました。メラミン混入を知りながら販売を続けた三鹿の理事長・田文華には無期懲役が言い渡され、三鹿は破産へと追い込まれました。また、メラミン混入を行い大量に売りさばいた耿金平は死刑が確定。さらに、他の原乳業者たちも逮捕となりました。

この事件をうけて中国では新たに食品安全法を施行。乳製品にはメラミンの混入検査が義務付けられました。

この事件後、日本でも国内のメラミン量の規定が定められたのに加え、輸入品に関しても厳しく検査されることになりました。

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