ASD(自閉症スペクトラム障害)「人とうまくつきあえない」|ETV特集

NHK・Eテレの「ETV特集」で人とうまくつきあえない、いじめ・虐待と自閉症スペクトラム障害が放送されました。最新の研究で、解決策が掴めなかった虐待やイジメなどの問題とASD(自閉症スペクトラム障害)との関連が指摘されています。ASD(自閉症スペクトラム障害)は自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群などと呼ばれている発達の障害を総称した新しい概念です。社会性とコミュニケーションの障害で本人には悪気がなくても周囲との摩擦が起こりやすく、いじめや虐待に繋がることも少なくありません。さらに、見過ごされるとうつや過食症、拒食症、不眠、フラッシュバック、強迫行為、自傷行為などの問題に繋がることが明らかになっています。

 

フラッシュバックはいじめなどの辛い体験をした後にささいな事がきっかけでつらい記憶が鮮明に蘇る症状です。人によっては恐怖のあまり泣き出したり体が硬直し動けなくなったりします。フラッシュバックをとめるには、その原因となっているトラウマを取り除くことが必要です。EMDRと呼ばれるトラウマを処理するための新しい治療法もあります。トラウマとなった体験を思い出させ、左右の手に交互に刺激を与えたり視線を左右に動かすように誘導します。この刺激が脳にどう作用するか詳しいメカニズムは分かっていませんが、トラウマが思い出しても苦痛を感じない過去の記憶へと変化していくことが分かっています。

 

様々な心の問題の背後にあることが分かってきたASD(自閉症スペクトラム障害)ですが、この診断名のもととなった自閉症は30年程前までめったに見ることのない珍しい障害と思われていました。その当時、診断や治療は知能や言葉に遅れがある子どもが対象となっていました。これが大きく変わるきっかけとなったのは日本が世界で最初に始めた1歳6ヶ月乳幼児健診です。この時、一見健常な子供の中に自閉症と似た反応を示す子供が数多く存在していることが初めて分かったのです。親とうまく意思の疎通が出来ていない子供たちでした。この事実は世界にも大きな影響を与えました。イギリスでは15歳以下の子供を対象に自閉症の有無を調べる大規模な疫学調査が行われました。その結果、知能や言葉の遅れには関係なく社会性やコミュニケーションの障害を持つ子供が一定数存在することが明らかになったのです。こうした子供たちを治療するため新たな診断基準が必要だと研究者たちは訴えました。こうした考え方から生まれたのがASD(自閉症スペクトラム障害)という診断名です。自閉症を頂点として社会性やコミュニケーションに関わる複数の障害を一つにまとめました。かつて珍しいと思われていた自閉症はもっと裾野の広いものとして捉えられるようになったのです。

 

金沢大学子どもこころの発達研究センターでは最先端の手法を使いASD(自閉症スペクトラム障害)の子どもたちの脳の研究しています。これまで200人以上の子供の脳を調べています。MEG(脳地場計測装置)は脳の神経細胞に流れるわずかな電流をとらえ、どの部分が活発に働いているかが分かります。人間の声を聞いた時、脳のどの部分が活発に働いているかASD(自閉症スペクトラム障害)の子どもと健常児を比較。健常児は人間の声を聞いた時に右脳に比べて左脳が活発に働きますが、ASD(自閉症スペクトラム障害)の子どもの場合右脳と左脳の活動の違いを比べてもあまり大きな差はありません。なぜASD(自閉症スペクトラム障害)の子どもは人間の声を聞いても右脳に比べて左脳が活発に働かないのでしょうか。その原因は左脳のブローカ野とウェルニッケ野を繋ぐネットワークにあることが分かってきました。ここは言葉の概念を理解する場所です。この部分の活動が健常児と比べて弱いのです。例えば「お母さんの温もり」という言葉をきいた時、健常児はお母さんの笑い声など様々なイメージを思い浮かべます。ところが、ネットワークの活動が弱いと言葉だけが浮かびそれに関わるイメージはあまり出てきません。会話をしても互いに同じイメージを共有することが出来ず違和感が生まれてしまうのです。ASD(自閉症スペクトラム障害)の人は脳の他の部分にも違いがあることが分かっています。右脳の視覚的な認識や記憶の能力が高いと言います。またASDの人は対人関係が苦手なだけでなく物の見え方や聞こえ方など感覚にも大きな違いがあることが分かってきました。

 

ASDを幼いうちに見つけ特別な療育を行うことで社会性やコミュニケーション能力を育てる試みが佐賀県で始まっています。1歳半健診でASDの疑いがある子を見つけて支援するプログラムです。この健診で約15%の子どもがASDの疑いがあると判定されます。判定を受けた場合、家族が希望すれば診断や特別な療育を受けることができます。1歳半から成人するまで継続して支援を受けられる仕組みが作られています。




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