がん幹細胞の最新攻略法!スルファサラジン&G47デルタ|サイエンスZERO

NHKEテレの「サイエンスZERO(サイエンスゼロ)」でがん幹細胞の最新攻略法が放送されました。

 

がん幹細胞は表面に特殊なたんぱく質を持っています。私はがん幹細胞ですという目印になります。それを専門用語で「がん幹細胞マーカー」と言います。がん幹細胞マーカーはがんの種類によって異なることが分かってきました。胃がんのがん幹細胞はCD44という目印を持っています。しかし、その働きを調べようと思っても、がんを体の外に取り出すと細胞は死んでしまいます。がん細胞を生きたまま調べるには、どうしても動物の体内で実験する必要があるのです。そこでまず、マウスの体内で確実で胃がんを再現する技術を開発。このマウスのおかげで胃がん幹細胞のなぞ解明へ一気に道が開かれました。

 

活性酸素は体内で常に発生しています。細胞の中にあるミトコンドリアが栄養と酸素を反応させてエネルギーを生み出すさい、活性酸素が発生するのです。この活性酸素は細胞のたんぱく質やDNAなどを傷つける困り者。こうした傷がたまることで細胞は老化していきます。それはがん細胞にとっても同じこと。活性酸素はがん細胞を老化させる毒でもあるのです。CD44というがん幹細胞が持つたんぱく質には活性酸素と取り除く巧妙な仕組みがあることが世界で初めて分かりました。がん幹細胞が持っているCD44は細胞膜の表面に突き出ています。凹んだ部分にxCTという別のたんぱく質がはまりこむことが分かってきました。xCTは細胞の外にあるシスチンを細胞の中に取り込むポンプのような働きをします。取り込まれたシスチンはグルタチオンに変化。グルタチオンは毒である活性酸素を壊してくれるのです。ところがCD44がないとxCTは安定せずシスチンを取り込むことが出来ません。つまり、がん幹細胞のCD44はポンプを安定させることでグルタチオンを増やし活性酸素を除去していたのです。

 

転移しやすいがんの代表格が乳がんです。乳がんはリンパや血液の流れにのって肺や肝臓などに転移しやすく、治療を困難にしています。乳がんの幹細胞が持つCD44には長いものと短いものが入り混じっています。中でも長いCD44はがんの転移と深く関わってることが分かりました。実験ではまず乳がんの幹細胞を長いCD44を多く持つものと短いCD44を多く持つものに分けました。そしてそれぞれマウスの乳腺に移植したところ、移植して30日後、どちらも乳がんが出来ました。この時、長いCD44が多い方はがんが肺に転移していましたが、短いCD44が多い方は肺に転移していませんでした。

 

がん幹細胞が持つポンプxCTを止めることはできないか。慶應義塾大学の佐谷秀行さんたちは世界中の論文を徹底的に調べました。そこで浮かびあがったのはすでに医療現場で使われているスルファサラジンという薬。スルファサラジンは潰瘍性大腸炎や関節リウマチの治療薬として20年以上前から使われています。スルファサラジンを胃がんのマウスに与えたところ、がんの成長を大幅に抑えることが出来ました。さらに乳がんのマウスにもスルファサラジンを与えたところ肺への転移を抑えられることが確かめられました。2013年4月、実際にスルファサラジンをがん患者に投与し安全性を確かめる臨床試験が始まりました。がん幹細胞の根絶に向けた第一歩が踏み出されたのです。

 

やっかいな脳腫瘍をがん幹細胞ごと根こそぎ撲滅するという秘策を編み出したのは東京大学医科学研究所の藤堂具紀さんです。その秘策とは病気の原因になる悪者を利用してがん幹細胞を殺そうという作戦。悪者とはヘルペスウイルス。ヘルペスウイルスは私たちの細胞の内部で増殖し外へ飛び出す時に細胞を破壊します。これをがん幹細胞に感染させれば次々と増殖してがん幹細胞を破壊してくれるはずです。しかし、この時に正常な細胞にまで感染してしまったら大変です。ところが、藤堂さんは遺伝子を作り変えてヘルペスウイルスが持つ3つのたんぱく質を取ってしまいました。3つのたんぱく質を奪い取ったヘルペスウイルスはG47デルタと名づけられました。G47デルタを脳腫瘍のがん幹細胞に感染させたところ、がん幹細胞は破裂して死んでいきました。東京大学ではこのウイルス療法の臨床試験が始まっています。ウイルスでがん幹細胞を撲滅できる日も遠くないかもしれません。




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

コメントは管理人の承認後に表示されますのでしばらくお待ち下さい。管理人からの返信はありませんのでご了承ください。