脂肪に潜むスーパー細胞ASC|サイエンスZERO

NHK・Eテレの「サイエンスZERO(さいえんすぜろ)」で脂肪に潜むスーパー細胞ASCについて放送されました。現代人の悩みの種である脂肪。ところがその脂肪に優れもののスーパー細胞が潜んでいることが分かりました。

 

乳がんの温存手術では人によって取り去る場所も形も様々なためシリコンなど人工物を入れて胸の形を元に戻すことは困難です。へこんだ部分に脂肪を注入する手術が行われていましたが、注入した脂肪細胞が死んでしまい多くの場合再びへこんでしまうという問題がありました。そんな課題の解決に乗り出したのが鳥取大学医学部附属病院です。形成外科医の中山敏准教授が胸の形を取り戻す秘策として目をつけたのが脂肪に潜むスーパー細胞ASCです。鳥取大学では全国で初めて厚生労働省の認可を受け去年、人への臨床研究をスタートさせました。まず、お腹の皮下脂肪から脂肪の組織を吸引。これを酵素で処理したあと、成分を振り分ける装置で脂肪の中に含まれるスーパー細胞ASCを取り出します。取り出したASCを別にとっておいた脂肪に混ぜASCが多い脂肪を作り、これを胸のへこみに注入します。

 

手術ではASCと脂肪を混ぜて胸のへこみに注入しますが、注入された脂肪は異物と判断されマクロファージによって攻撃されてしまいます。ここでASCがサイトカインという物質を放出。サイトカインを受け取ったマクロファージは攻撃をやめます。しかし、注入した場所には血管がないため酸素も栄養も届きません。そこでASCは血管新生因子というたんぱく質を放出。するとASCがある場所をめがけて血管が伸びてきます。こうして酸素や栄養が送られ注入された脂肪細胞が生き延びられるのです。

 

腹圧性尿失禁の原因は病気や出産、老化などによって尿道をしめる括約筋や平滑筋の機能が弱まることにあります。この症状も脂肪から取ったASCで治療しようという研究が始まっています。これまでの治療法ではテープによって尿道を吊り上げるなどして機能を補っていましたが、これだと体内に異物を入れなくてはいけません。一方、新しく考えられた方法では自分の脂肪から取り出したASCを尿道の周囲に注入し、衰えた筋肉そのものを回復させようというのです。試験的に腹圧性尿失禁の患者11人にASCを注入する手術を行ったところ、8人が改善、1人は完全に治りました。

 

国立がん研究センターではASCを使って肝臓の病気を治療する研究も行われています。肝臓の病気を持ったマウスのしっぽにASCを注入すると、何もしないマウスは8日で生存率が20%まで低下したのに対し、ASCを注入したマウスの生存率は90%。劇的な改善が見られました。しっぽから注入されたASCはまず全身に広がりますが、その後病気の肝臓をめがけて集まっていきます。

 

血管に注入したASCは例えるなら潜水捜査船に乗った医者のように血液の中を巡回しています。この時、患部からはSOSにあたる物質が放出されています。ASCがSOSを細胞の表面の受け皿でキャッチすると探査モードに切り替わります。するとASCは血流に流されないように血管の内壁に付着。ゴロゴロ転がりながらSOSの出所を突き止めていきます。患部を発見すると救援モードに。血管の壁をこじあけ患部に向かって飛び出していくのです。患部に到着したASCは傷ついた細胞の修復と再生を助けるサイトカインを放出します。




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