プロキシマb 地球に一番近い系外惑星|サイエンスZERO

2016年8月24日、宇宙の惑星探査の歴史を塗りかえる大ニュースが飛び込んできました。太陽系に最も近い恒星プロキシマ・ケンタウリの周りを回る地球に似た惑星が発見されたのです。その名もプロキシマb。地球からの距離は4光年です。しかも、この惑星には生命が存在できる環境があると言います。

 

 

天文学者の悲願!プロキシマb発見の道のり

プロキシマbが見つかったのは、ケンタウルス座α星の一角です。ケンタウルス座α星は、太陽系に最も近い恒星として知られ、SF作品でも度々描かれてきました。

 

α星は肉眼では1つに見えますが、実は3つの恒星がつらなる三重星です。ほぼ同じ位置にある恒星A・Bと約0.2光年離れた位置にあるプロキシマ・ケンタウリです。3つの中で地球に一番近くプロキシマという名前はラテン語で「最も近い」を意味します。このプロキシマ・ケンタウリの周りを回る惑星が今回発見されたのです。

 

クイーン・メアリー大学のギエム・アングラーダ・エスクデ博士によると、プロキシマ・ケンタウリに惑星を見つけることは、天文学者の長年の悲願だったと言います。

 

実は、今回の発見につながる観測は16年前から始まっていました。系外惑星は非常に暗いため、直接観測することはほとんどできません。そこで間接的に調べる手法が使われます。それが恒星のわずかな揺れに着目する方法です。

 

例えば、太陽は周りの惑星の重力に影響を受けわずかに揺れ動いています。木星は強い重力で太陽を引っ張るため、太陽は秒速13メートルで揺れ動いています。この恒星の規則的な揺れをとらえることで間接的に惑星の存在が分かるのです。

 

プロキシマは、これまで複数のプロジェクトで観測が行われてきました。その結果、惑星の存在を示す兆候がとらえられていました。しかし、プロキシマが揺れ動く速度は秒速1メートル。惑星の存在を証明するのは4光年先のかすかな動きを正確にとらえなければなりませんでした。さらに、これほど恒星の動きが小さいとフレアや黒点の動きを惑星の影響と見間違えてしまうこともあります。

 

アングラーダ博士は2016年1月、国際的な観測プロジェクト「Pale Red Dot Campaign(かすかな赤い点)」を始めました。8か国から31人の研究者が参加。プロキシマのわずかな揺れを正確にとらえるため、世界最高の精度を持つチリの望遠鏡で60日間連続で観測を行うことにしました。さらに、世界各地の4つの望遠鏡を使い、プロキシマのフレアや黒点の動きも監視しました。

 

こうして新たに観測されたデータを重ね、統計的な処理をほどこすとハッキリと波の形があらわれました。周期は11.2日。この波形が間違いである確率は1000万分の1以下という正確なデータでした。こうしてプロキシマ・ケンタウリを11.2日の周期で回る惑星プロキシマbの存在が確かめられたのです。

 

惑星プロキシマbの姿とは?

東京大学大学院理学系研究科の田村元秀教授がまず注目したのは、プロキシマbの質量です。プロキシマbは恒星プロキシマ・ケンタウリを毎秒1メートルの速度で揺らしています。恒星の質量などを合わせて計算するとプロキシマbの質量は地球の約1.3倍だと分かりました。実は質量が分かると、惑星がどういう組成で出来ているか分かります。

 

惑星には岩石、ガス、氷の3つのタイプがあります。地球の質量を1とした時、1前後の惑星は岩石、10倍ほどの惑星は氷、100倍程の惑星はガスで出来ていることが分かります。このことから系外惑星の質量が分かれば、どのタイプか推測できるのです。地球の1.3倍の質量であれば岩石惑星であると言えます。岩石惑星であれば水が存在すれば生命を育む海ができる可能性があります。

 

 

では、プロキシマbにはが存在するのでしょうか?それを左右するのが恒星との距離です。恒星に近すぎると水は蒸発してしまいます。逆に遠すぎれば氷になります。恒星とちょうど良い距離にある時だけ、液体の水が存在するのです。

 

プロキシマbと恒星の距離は約700万キロ。地球と太陽の20分の1しかありません。これでは干上がってしまうと思いきや、意外にもプロキシマbには液体の水が存在しうると言います。その秘密は恒星プロキシマ・ケンタウリにあります。プロキシマは質量が太陽の10分の1しかありません。こうした小さな恒星は赤色矮星と呼ばれ、温度が低いのが特徴です。

 

プロキシマ・ケンタウリの温度は太陽の約半分。放出するエネルギーは600分の1以下です。そのため、プロキシマbは恒星との距離が近くても液体の水が存在できるのです。

 

プロキシマbへ向かう!?驚きの探査計画

2016年4月12日、驚くべき計画が発表されました。スティーブン・ホーキング博士をはじめとした研究者が発案した系外惑星の探査計画「スターショット」です。探査の目的地はプロキシマbのあるケンタウルス座α星。そこに無人探査機を送り込み、直接調べようというのです。

 

最も近いとはいえ、その距離は40兆キロメートルあります。これまで最も遠くに到達したボインジャー1号ですら、地球から20億キロしか離れていません。課題となる推進力には光の力を使う計画が進められています。

 

まず、ヨットのような帆を持つ小型の探査機を打ち上げます。そして地上から強力なレーザー光線を照射し、光の20%の速度まで加速させます。実は、光の力で進む宇宙ヨットは日本が打ち上げたイカロスが世界で初めて成功しています。この原理を使えば、打ち上げて20年でケンタウルス座α星に到着できるというのです。

 

そして8月24日、プロキシマbの発見を伝える記者会見の場に、スターショット計画の事務局長ピート・ワーデンさんの姿がありました。

 

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発見!地球に一番近い系外惑星”プロキシマb”

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