2025年問題 ~日本の医療は守れるか?~|NHKスペシャル

NHK総合テレビの「NHKスペシャル」で日本の医療は守れるか?2025年問題が放送されました。私たちの命を守る医療ですが、今深刻な事態に直面しています。高齢化にともない病院に患者が殺到。救急患者の受け入れにも支障が出始めています。また医療費も毎年1兆円規模で伸び続け、4月から消費税の税率や高齢者の自己負担の一部を引き上げたもののとてもまかないきれません。このままでは10年後、日本の医療は重大な危機に陥る恐れがあります。これは「2025年問題」と呼ばれています。2025年は戦後のベビーブームで生まれた団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり医療を必要とする人が一気に増えます。その結果、医師や病院が逼迫。命に関わる場合でも治療が受けられない事態に陥るというのです。そしてその時、国の医療費は54兆円、現在の1.5倍に膨れ上がります。一体どうやってまかなうのでしょうか?すでに国は膨大な借金を抱え税金や国債に頼るのにも限界があります。保険料を上げれば、ただでさえ年金の負担に不満を持つ若い世代にさらにしわ寄せがいきます。かといって自己負担を増やせば病院に行くのを控えるお年寄りが出てくる恐れがあります。これに国も危機感をつのらせています。医療と介護をいったいとして捉え制度を抜本的に見直す法案を国会に提出。現在審議が続いています。

 

医療の現場ではすでに深刻な事態が広がっています。東京大田区にある大森赤十字病院は救急患者の命を救い、がんや脳の疾患など高度な医療を行うのが役割です。ところが、ここ数年症状の軽い高齢の患者が増え外来の窓口には1日800人以上が押し寄せています。診察室を増設し医師を2倍近くに増やしましたが追いつきません。入院病棟もほぼ満杯。ベッドの9割以上が常に埋まっている状態です。入院した高齢の患者が長くとどまるケースが増えているからです。いずれ本来の役割である重症の患者の受け入れも難しくなると危機感を強めています。

 

2025年には事態はさらに悪化し日本の医療は崩壊の危機に直面すると警告するのが国際医療福祉大学の高橋泰教授です。試算によると2025年、75歳以上の後期高齢者が全国的に増加。特に大都市圏で急増します。その結果、現在でも医師不足が深刻な地方に加え都会でも医師が逼迫。命に関わる事態が起きかねないと言います。10年後の医療の危機はなぜ起こるのでしょうか。それは団塊の世代と深い関係があります。戦後のベビーブームで生まれた団塊の世代。昭和22年からの3年間で270万人前後の人が生まれました。この団塊の世代が2015年に75歳を超えることで医療が必要な後期高齢者が一気に増加。現在より600万人多い2180万人に達するのです。後期高齢者の医療費は年間89万円、若い世代の8倍もかかります。そのため2025年の日本の医療費は54兆円に膨れ上がるといいます。介護の20兆円と合わせると年金を上回る規模になると予想されています。病院を作ろうにもお金がかかるため簡単に病院を増やすことはできません。また医師や看護士を増やそうにも働く若い世代が減っていきます。

 

これに対し国も動き出しています。キーワードは「病院から地域へ」。誰でも大きな病院で診てもらえる今の仕組みを変えて地域のお医者さんに行ってもらおうというもの。大きな病院は高度な検査機器などで莫大な費用がかかっているため、体調が悪くなっても大病院にはいかず、まず地域のお医者さんにかかって欲しいということです。そして重い病気で入院してもできるだけ早く退院して在宅に移って欲しいと考えています。大森赤十字病院では地域の医師とネットワークを結び、病状が安定した患者に自宅近くの医師を紹介。そこに通ってもらうことで病院に来る患者を減らそうとしています。2025年問題を解決する切り札と考えられているのが「家庭医」です。患者は近所の医師では不安なので大きな病院に行き、病院が混雑し医療費も増えてしまいます。これを解決するには近所に信頼できる医師を作るしかありません。それが家庭医です。20年以上前から家庭医の育成に取り組んできたのが福島県立医科大学の葛西龍樹教授です。家庭医はこれまでの医師といったいどこが違うのでしょうか?医療は症状の重さに応じて3つの段階に分けられます。最も軽いプライマリ・ケア(一次医療)が全体の8割を占めています。日本ではプライマリ・ケアを内科、外科、精神科、小児科、産婦人科など、それぞれの専門医が別々に診察しています。これに対し家庭医は病気の種類に関わらずプライマリ・ケアの全てを一人で行います。海外では家庭医は広く普及しています。その先進国がイギリス。家庭医になるためには3年間の専門的な研修を受けた医師が認定試験に合格する必要があります。治療は問診や触診が中心。むやみに高額な検査は行いません。病気の予防にも力を入れ医療費の削減に大きな効果を上げています。去年、国は家庭医のように幅広い分野をカバーする総合診療医を育成していく方針を打ち出しました。具体的にどう認定し広めていくのか、現在検討が続いています。