男はつらいよ 1000人の心の声|クローズアップ現代

NHK総合テレビの「クローズアップ現代」で男はつらいよ1000人の心の声が放送されました。男性の幸福度は女性より低い傾向が続いてきました。先月、政府が発表した平成26年度の男女共同参画白書では「現在幸せである」と回答した女性が34.8%だったのに対し男性は28.1%でした。働き方や価値観が大きく変わる中で最近、国も企業も女性活用の重要性を重視し女性に光が当たっていますが、日本はまだまだ男性中心の社会と言えます。働く女性で非正規の仕事に就いている人の割合は53.9%と、19.4%の男性よりもはるかに高く、女性の平均賃金は男性の7割程度。さらに1日に家事に費やす時間は女性が男性の5倍。いまや共働き世帯が片働き世帯を上回るなど求められる女性、男性の役割が変化しています。しかし、なぜ男性の幸福度は女性より低いのでしょうか?国際的な調査では日本の男性、女性の幸福度の差は他の先進国より際立って大きく、また男性の幸福度も各国に比べ低いのです。今の男性が感じている生きづらさとは何なのでしょうか?

 

NHKが全国の10代~80代の男性に送ったアンケートの結果、1081人のうち「生きづらさを感じている」男性は54%。その理由として最も多かったのが「仕事での人間関係」、次に「収入への不満」「労働時間の長さ」「家族との関係」でした。さらに生きづらいと感じる度合いも以前と比べて変化があるかも尋ねると、半数の人が以前よりも生きづらくなったと回答しました。

 

アンケートに答えた一人である54歳の足立光男さん(仮名)は妻と長男との3人暮らしをしています。男は外で働き一家を支えるものだと考えています。往復3時間かけて会社に通い続け住宅ローンを返済しています。しかし去年、多発性筋炎を発症し、いつまで働き続けられるのか将来への不安を抱えるようになりました。家事や育児を一手に担う妻の春子さん(仮名)はパートで働くのが精一杯だと言います。病気を抱えながらも大黒柱であり続けようとする足立さん。その辛さをせめて妻には理解して欲しいと感じています。しかし足立さんは寝る前に今日あった出来事を奥さんに話すそうですが、大体聞き流されるそうで寂しいと感じているそうです。

 

自動車部品メーカーで正社員として働く浅野保照さん(37歳)が今目指しているのは育児をがんばる男性イクメンです。一方で浅野さんの仕事は忙しく深夜や休日にも働かなくてはなりません。専業主婦の妻は育児や家事を担うと言ってくれますが、浅野さんはあくまでイクメンにこだわっています。最近では疲れがとれないまま仕事に向かう日も増えました。

 

求められる男らしさ ギャップに悩む男たち

実はアンケートの中で341人の男性が生きづらさの原因として選んだのは「夫・父・恋人として求められる役割」「男らしさという幻想」です。一家の大黒柱、イクメンなど時代と共に求められる男らしさと現実とのギャップに戸惑っているというのです。

 

10年前、全国に先駆けて男性専用の相談窓口を設置した大阪市。相談件数は年間300件以上。臨床心理士などが対応し相談が2時間に及ぶこともあります。36歳のAさんは2年前に離婚を経験し臨床心理士のもとに通っています。Aさんは20代で起業。高級野菜を独自に仕入れホテルやレストランにおさめています。結婚したばかりの頃は仕事も妻と分担し公私共に順調でした。ところが妻の両親から「もう少し楽をさせてやることはできないのか」と言われてしまいました。親の世代の価値観を受け入れるべきなのか、Aさんは悩みを妻にも打ち明けることが出来ませんでした。ストレスから徐々に些細なことでも妻につらく当たるようになったAさん。次第に夫婦の溝は深まり離婚に至ったと言います。それから2年、悩んだ末に辿り着いた言葉が旧日本海軍の山本五十六元帥の「男の修行」です。

 

「男の修行」
苦しいこともあるだろう。
言いたいこともあるだろう。
不満なこともあるだろう。
腹の立つこともあるだろう。
泣きたいこともあるだろう。

これらをじっとこらえてゆくのが男の修行である。

 

様々な男らしさにしばられる男性ですが、そこから解放されるのは容易ではないと指摘する専門家もいます。社会生活における男女の役割と脳の機能の関係性について研究してきた横浜市立大学の田中名誉教授です。大脳新皮質や海馬などは幼い頃からの周囲の言葉や行動を記憶しています。父親が家計を支え、母親が育児や家事を担う両親の元で育つと男女の役割をそう認識するように脳が作られます。「男の子なんだから泣かない」と教育を受ければ泣くことを抑制するように脳が学習し、それを男らしさだと認識します。こうした価値観は20歳前後までには定着し、それ以降に更新するのは難しくなり生きづらさの原因の一つになっているのです。