マイクロマシン「細胞を優しくつまむミクロの手」|夢の扉+

TBSテレビの「夢の扉+(ゆめのとびらプラス)」でマイクロマシンについて放送されました。マイクロマシンを生み出したのは立命館大学工学博士の小西聡(こにしさとし)さん。iPS細胞による再生医療で人への応用で注目されている病が加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)です。網膜の中心にある黄斑部分に障害が生じ、最悪の場合失明します。推定患者数69万人。完治は難しいとされている病です。しかしiPS細胞の登場で希望の光が。網膜組織の移植が現実味を帯びてきたのです。そこで期待されているのが小西聡さんのマイクロマシンです。マイクロマシンの上にiPS細胞で作った細胞シートを乗せクルっと収納。そのまま注射針の中を通って患部へ。そこで開いてピンポイントでシートを移植。小西聡さんの卓越した工学技術が新たな医療の未来を切り開こうとしています。マイクロマシンは電気ではなく空気の力で動いています。マイクロマシンの関節部分には風船のような袋がついています。空気を送ると袋が膨らみ指が曲がる仕組みです。素材は柔らかいシリコンゴム。これも安全・安心のポイントです。

 

空気の力を利用し、これまで存在しなかった極小マシンを開発してきた小西聡さん。なぜ小さなマシンにこだわるのでしょうか?それは「鉄腕アトムの宇宙ヒョウの1コマにあります。宇宙ヒョウはエネルギーを吸い取る強敵でアトム一人ではとても敵いませんが、何体も集まり集合体になることで倒すことに成功します。一つ一つでは単純なことしかできませんが、沢山集まると思いもかけないスゴイことができるのです。研究者としてだけでなく小西聡さんは教育にも力を注いでいます。学生たちに伝え続けていることがあります。それは「社会の役に立つ研究」ということ。小西聡さんが貫く研究姿勢の原点は東京大学工学部の頃、研究テーマが恩師からなかなか認めてもらえず苦しみ抜いた日々にありました。恩師には「これは世の中にどう役立つんですか?目先の狭い世界にとらわれてはいけません」と却下され続け、「すぐ結果が出そうな研究にばかりこだわっていた」と気づいたのです。「未来につながる研究を」という恩師の教えを胸に小西聡さんは歩き始めました。

 

小西聡さんは再生医科学研究の田端泰彦農学博士と画期的なプロジェクトを進めています。それはマイクロマシンでわずか0.2ミリの細胞組織をつかむというもの。これは新薬の開発に革命を起こすと言います。新薬の効果を見るには細胞組織を使った実験が有効です。そのさいピペットを使い細胞を吸い込むという手作業があるのですが、ここに大きな問題が。ピペットでは細胞を傷つけてしまうことがどうしても避けられません。この問題を解決できれば、あらゆる新薬の開発をスピードアップできます。そこで小西聡さんが挑んでいるのが0.2mmの細胞組織を傷つけずに運べるマイクロマシンです。0.2mmの細胞組織をモニター上でロックオンするとアームが動き細胞組織の真上へ。シリコンゴムの柔らかいマイクロフィンガーが細胞を見事に掴み上げることに成功。ところが、離れなくなってしまいました。原因は滑らかに加工したはずの掴む部分が時間経過によって劣化したことで細胞がくっつきやすい状態になっていたことでした。しかし、マシンの寿命が分かったことも収穫の一つでした。