ロッシーニ「セビリアの理髪師 序曲」|ららら♪クラシック

超売れっ子が生み出した魅惑の序曲

舞台は18世紀のスペイン・セビリア。青年貴族アルマヴィーヴァ伯爵は、街で見かけた若い娘ロジーナに一目惚れし、何とか彼女に近づきたいと思い悩みます。莫大な財産と美貌に恵まれたロジーナ、周囲のガードは堅く屋敷の外に出ることもできません。そこで、アルマヴィーヴァは街の何でも屋である理髪師フィガロの知恵を借りました。アルマヴィーヴァは変装してロジーナの屋敷に忍び込み、見事恋を成就させるというストーリーです。そんなドタバタ喜劇を、イタリアオペラらしい魅力的なアリアが彩ります。

 

ジョアキーノ・ロッシーニ

 

独学で音楽を学んだジョアキーノ・ロッシーニは18歳でオペラ作曲家としてデビュー。すぐに実力が認められ、売れっ子作曲家として知られるようになりました。発表する作品が各地で評判となり「ナポレオンは死んだが別の男が出現した」と言われる程のロッシーニ旋風をヨーロッパ中に巻き起こしました。

 

ロッシーニは筆の速さでも有名で、1年に3本ペースでオペラを発表していました。そんな人気絶頂の24歳の時に13日間で書き上げたのが「セビリアの理髪師」です。この作品も大ヒット。彼の作品で最も上演回数の多いオペラとなりました。

 

本編上演前に演奏され観客をオペラの世界へ誘うのが「セビリアの理髪師 序曲」です。軽快で親しみやすいメロディーが次から次へと展開されるこの曲は、単独で演奏されることも多いロッシーニの代表作の一つです。

 

名旋律の料理人!

ロッシーニはオペラ「セビリアの理髪師」が完成したと思ったところで大変なことに気づきました。本編の作曲に集中するあまり序曲を書き忘れていたのです。そこで、自分が過去に作曲したオペラの序曲をそのまま転用して上演にのぞみました。

 

使用したのは1年前に発表した「イギリス女王エリザベッタ」の序曲。驚いたことに、その曲はさらにその2年前に作った「パルミラのアウレリアーノ」の序曲を転用していたのです。つまり、この曲は3つのオペラ共通の序曲だったのです。

 

「セビリアの理髪師」がスペインを舞台にした喜劇であるのに対し、「イギリス女王エリザベッタ」は16世紀のイギリス、「パルミラのアウレリアーノ」は3世紀の中東が舞台のシリアスなオペラです。時代も舞台も異なるオペラの序曲を大胆にも組み合わせました。また、オペラ本編では同じメロディーをアレンジして使いまわすということもしていました。

 

37歳で作曲家の道を退き、美食家として余生を送ったロッシーニ。フォアグラとトリュフを組み合わせた贅沢極まりないステーキを始め、意外な素材の組み合わせで料理史に残るレシピを考案しました。

 

「ららら♪クラシック」
ロッシーニのセビリアの理髪師 序曲

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