新婚夫婦殺害事件|アンビリバボー

フジテレビの「奇跡体験!アンビリバボー」で新婚夫婦殺害事件について放送されました。1975年5月、新婚夫婦の22歳の杉本小百合さん(仮名)と26歳の杉本俊夫さん(仮名)が関西地方のとある団地に引っ越してきました。家の家主は大手企業で管理職をつとめる田中浩市さん(仮名)彼は団地の一部屋をマイホームとして購入したのですが、転勤のため部屋を夫婦に貸し出したのです。

 

3ヵ月後のある日、関西地方は暴風雨が吹き荒れていました。俊夫さんは何かの気配を感じ夜中に目が覚め、斧を持った男に襲われました。小百合さんが110番通報したのは翌朝。警察が駆けつけたものの部屋から応答はなくカギもかかっていました。警察は隣の部屋からベランダ伝いに新婚夫婦の部屋に移動。しかしベランダのサッシもしっかり施錠されていました。やむなく窓ガラスを割って部屋に入ると、滅多切りにされた瀕死の俊夫さんがいました。電話の前には深い傷を負った小百合さんの姿が。小百合さんは110番通報で力尽きたのか間もなく亡くなりました。俊夫さんも翌日亡くなりました。

 

警察が現場を調べたところ凶器の手オノはソファーのクッションの下から発見されました。しかし指紋など犯人に結びつくものは見つかりませんでした。しかし俊夫さんは亡くなる前に犯人は知らない男でハンチングを被っていたという重要な証言を残していました。さらに刑事だちが近隣住民に聞き込み調査を行ったところ、夜中の3時頃に杉本さんの部屋の前をウロウロしている男がいたことも判明。ハンチング帽を被った男が新婚夫婦を殺害したことは間違いないと思われましたが、大きな謎も残っていました。部屋は完全なる密室だったのです。団地を販売した不動産業者に確認したところ、この部屋の玄関のオリジナルの鍵は3つ存在し、その全てを家主である田中さんが保有していました。新婚夫婦へは3つともカギが渡されました。鍵は新婚の2人が一つずつ、そして小百合さんの両親が持っていました。夫婦は家にいる時、テレビの上に鍵を置いていました。しかし事件があった日、鍵にちょっとした異変が起きていました。新婚の2人が使っていた2本の鍵のうち1本がテレビの上にありましたが、なぜかもう1個は玄関に落ちていたのです。犯人は鍵を持って部屋を出ると外から鍵をかけ郵便受けから中に鍵を投函したと思われました。

 

調べを進めていくと、小百合さんの両親が預かっていた鍵がスペアキーであることが判明。当時は一般の人が鍵に記された刻印を気にすることなどほとんどありませんでした。新婚夫婦と両親がそれぞれオリジナルの鍵だと思っていても不思議なことではありません。しかし、不動産業者によるとオリジナルの鍵は3つ存在したはず。なぜその一つがスペアキーに替わっていたのでしょうか?刑事たちは家主である田中さんのもとへ。田中さんは部屋を貸す1年前、同僚たちと飲んだあとクレジットカードや身分証、鍵などを入れていた定期入れを落としてしまったと言います。警察へ遺失物届けを出したものの見つからずクレジットカードは悪用されました。そのためスペアキーを作っていたのです。今ほど防犯意識が高くなかったこの時代、鍵をなくしても錠前ごと交換する家庭は少なかったのです。クレジットカードでは高級時計を20本も購入されました。犯人は高級時計を金に換金するため田中さんの身分証を使って質入れしていることが判明。しかし、取引カードに押された私印は指紋の照合が出来ないよう巧妙にズラしてありました。指紋を割り出されるのを警戒して私印をずらすのは前科者によく見られる手口でした。刑事たちはさらに入念に捜査を続け近隣の質屋をしらみ潰しに当たりました。すると犯人の押した私印が不鮮明だったため、店主が2度もやり直しをさせている店を発見。犯人のハッキリとした指紋を入手したのです。指紋を照合した結果、38歳の元タクシー運転手・鈴木祐介(仮名)であることが判明。鈴木は窃盗の常習犯で18回もの逮捕歴があり、10社近いタクシー会社を転々としていました。刑事たちは鈴木が働いていたタクシー会社を捜索。大家の田中さんは鈴木が運転するタクシーに乗り鍵の入った定期入れを落としていたことが判明。追い詰められた鈴木は新婚夫婦殺害を認め、全てを自供しました。

 

鍵と一緒に拾った身分証から家主の田中さんが大企業に勤めていることを知っていた鈴木。さらに身分証には自宅の住所まで記載されていました。鈴木はそれを頼りにタクシーで団地へと向かいました。団地に到着すると階段の片隅で手袋をはめ変装用のハンチング帽を被り、田中さんの部屋に侵入しようとしました。ところが、表札には別人の名前が記載されていました。間違いなのかと思い近くの部屋を確認。やがて田中という表札がどこにもないことを確かめた鈴木は鍵を差し込んでみました。するとドアが開いたのです。ここまで来た以上、誰の家でも侵入するつもりでした。そして預金通帳など大物を狙って物色し始めました。ところが夫の俊夫さんが目を覚ましたのです。騒がれる前に手オノで襲い掛かり、悲鳴を上げた妻の小百合さんにも手斧を振り下ろしました。その後、部屋を物色。しかし、まとまった金や通帳は見つかりませんでした。大金を狙っていたため夫婦の財布などには手をつけませんでした。結局そのまま夜が明け鈴木は逃亡を決意。テレビの上のカギを見つけると拾った鍵で侵入したことがバレないように偽装工作をすることにしたのです。家の中にあった鍵を玄関先に置いて何者かが部屋を出た後、鍵を郵便受けから投函したように見せかけたのです。鈴木は犯行に使った鍵は団地で投げ捨てたと供述。供述通りの場所から鍵は発見されました。鈴木はこれまでタクシー会社をいくつも渡り歩き、就職と退職を繰り返していました。そしていつしか失業保険を不正受給するように。事件の数日前、その不正が発覚。32万円の返還を求められていました。お金を工面できるはずもなく、鈴木は1年前に拾った鍵のことを思い出したのです。

 

事件から2年後の1977年、裁判で鈴木に死刑判決が言い渡されました。その後、控訴・上告するも最高裁はこれを棄却。刑が確定。そして悲劇の夜から13年後、死刑は執行されました。幸せな新婚夫婦の命を奪い去るきっかけは鍵の落し物という誰にでも起こりうる些細な出来事だったのです。