認知症革命 最後まで、その人らしく|NHKスペシャル

NHK総合テレビの「NHKスペシャル」シリーズ認知症革命 第2回 最後まで、その人らしくが放送されました。

 

認知症の人の心の内は

島根県にある重度認知症患者デイケア「小山のおうち」は精神科クリニックが運営するデイケア施設です。利用者は自宅から通い日中ここで過ごします。30人程いる利用者の多くは重い認知症の人です。家族が徘徊や暴力などに悩みここに通うようになりました。元井京子さん(65歳)の認知症は前頭側頭型と呼ばれるタイプで、もの忘れに加え言語機能の障害によって同じ言葉を繰り返すことが多く意思疎通が難しくなります。京子さんの変化に最も心を痛めてきたのが夫の功さんです。京子さんは4年前に認知症と診断され、2年前には徘徊が始まりました。日を追うごとに理解できない言動が増えていきました。功さんは妻が何を考えているのか分からずにいます。認知症が進みコミュニケーションが難しくなった人たちの心の内はどうなっているのでしょうか?精神科医の高橋幸男さんは長年その課題と向き合ってきました。重い認知症の人たちと接する中で、その心の奥には何かがあると感じていた高橋さんが辿り着いた試みの一つが手記を書いてもらうことです。すると、喜んだり悲しんだり様々な感情があることが見えてきたのです。

 

見えてきた心の中の世界

それまで文章など書けるはずがないと思われていた重い認知症の人たちですが、信頼関係を築いたスタッフが時間をかけて接すると半分ほどの人が気持ちを書けるようになると言います。水師愛子さん(78歳)はもの忘れに加え家族にも手をあげるようになり「小山のおうち」に通い始めました。水師さんが書いたのは夫が営む印刷所での客とのやり取りでした。こうして施設でつづられた手記は70を超えます。そこから認知症の人たちの心の内が見えてきました。最も多く書かれていたのはもの忘れがつらいという気持ちです。

 

認知症が進んでも心は失われない

元井京子さんも手記を書きました。そこには認知症になったつらさがつづられています。「家では旦那や息子が時々怒ることがある。何で怒るかと私も怒る。怒られると家出することがある。私はいない方が良いと思われると思うから家出する」夫の功さんは妻の気持ちを初めて目の当たりにしました。言葉で伝え合うことは難しくても京子さんは心を持ってここにいると思って過ごしているそうです。

 

アメリカ発 最新情報 暴力などが穏やかに

家族を悩ます徘徊や暴力などの症状をどうしたら緩和できるのか。認知症ケアの分野から研究を続けてきたのがペンシルベニア州立大学のアン・コラノウスキ教授です。介護施設で暮らす認知症の人に様々なケアを提供し、症状の変化を調べてきました。これまでアメリカでは暴力などの症状を抑えこむために抗精神病薬がよく用いられてきました。しかし、高齢者に使うと死亡リスクが高まるとして懸念の声が高まっていました。薬に頼らない新たな方法がないか、注目したのがどの施設でも必ず行っているレクリエーションでした。通常は全員で同じプログラムを楽しみますが、研究ではそれぞれ違う内容を提供することに。まず始めに認知症の人128人と一人一人面接を実施し詳細な性格分析を行い、どんなプログラムに興味があるか探りました。その結果をふまえ最も興味を抱きそうなプログラムを決めていきます。例えば美しいものが好きで内向的な人はガーデニング、頭を使うことや競争が好きな人はパズルゲーム。さらにそれらを行う能力がどれくらい残されているかについても考慮し3週間にわたってプログラムを提供しました。その結果、本人の興味と能力に見合ったプログラムを提供した場合、暴力や暴言などの症状が24%減少したのです。こうした研究の成果などをふまえ、今年7月アメリカ政府は認知症のケアを行う施設に対するガイドラインを改正。薬を減らし本人の興味や能力などを重視したケアを行うことを補助金を出す条件にしました。日本でも9割以上の人に症状の改善が見られたという報告があります。

 

症状が穏やかに 心を見つめるケア

「小山のおうち」ではどんなに症状が重くても一人の人間として接します。ほとんど反応がなくても丁寧に声をかけます。その人なりの心があると考えているからです。何より大切にしているのは認知症の人たちのどんな言動も肯定すること。こうしたケアを続けることで暴力が絶えなかった人も次第に穏やかさを取り戻していくと言います。さらに認知症の人の気持ちを家族に理解してもらう取り組みにも力を入れています。多くの人が家族の中でつらい思いをしていると訴えていたからです。

 

認知症でも大丈夫!世界が注目のまち

静岡県富士宮市には約4000人の認知症の人が暮らしています。富士宮市のキャッチフレーズは「認知症になってもそれまでと変わらない暮らしができるまち」です。多くの場合、認知症と診断されると例え軽度でも家にこもりがちになります。石川恵子さん(52歳)は若年性認知症と診断されて3年になります。人の顔がわからなくなることもありますが週5日、福祉施設で働いています。認知症になると仕事を辞めざるおえない人が多い中、富士宮市では様々な企業や団体が働く場を提供しています。認知症の人を孤立させないための取り組みも数多く行われています。「よりあいサロン」は認知症の人が家に閉じこもらないよう地域の人が始めたおしゃべりの場です。取り組みのほとんどは行政の主導ではなく市民が自発的に始めたものです。きっかけを作ったのは佐野光孝さん(67歳)です。

 

普通に暮らしたい まちを動かした願い

8年前、ガス会社で営業マンをしていた佐野さんは認知症と診断され仕事を辞めざるおえず友人との付き合いも途絶えました。悩んだ佐野さんは市役所に相談に行き「これまでと同じように誰かの役に立ちたい」と訴えました。当時、認知症の支援といえばデイサービスの紹介など介護に関するものばかりで、佐野さんの訴えにこたえる術はありませんでした。市は地区の集まりや学校などに佐野さんが出向き認知症について話す場を作ってくれました。認知症の人の思いを知った富士宮市の人々。その中から仲間に加わらないかという声が次々に寄せられました。佐野さんの姿は自宅に閉じこもっていた他の認知症の人たちの心も動かしました。認知症であることを明かし、思いを語る人が次々に現れ、それをサポートしようと見守り活動やよりあいサロンなどの取り組みが生まれていったのです。認知症のことを知りサポートを行う認知症サポーターも急増。当初35人だったサポーターは現在1万1902人に増えています。




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