認知症革命 認知症予防への道|NHKスペシャル

NHK総合テレビの「NHKスペシャル」シリーズ認知症革命 第1回 ついにわかった!予防への道が放送されました。

 

そのもの忘れは認知症の前ぶれ?

雑誌記者の山本朋史さん(63歳)は61歳を過ぎた頃から自分の物忘れが気になり始めたと言います。親しい友人の名前が出てこなかったり頻繁にモノをなくすようになったのです。単なる年のせいだと思って過ごしていましたが、大事な取材の約束を忘れてダブルブッキングしてしまいました。30年間の記者生活で初めてのことでした。認知症が心配になった山本さんは2年前、専門病院を受診。医師に告げられた診断名はMCI(軽度認知障害)でした。通常、年をとるにつれ記憶力や判断力などの認知機能は徐々に衰えていきます。ところが、この衰えが急速に進むとやがてある水準を下回り認知症に。MCIは正常と認知症との境目で、認知症ではなく認知症の予備軍とも言われる段階です。MCIだと診断された山本さんは、このままだといずれ認知症になる危険性を指摘されました。

 

認知症予防のラストチャンス

世界でもMCIの段階であれば認知症を予防できるという研究が進んでいます。アメリカの研究グループはMCIと診断された高齢者600人が、その後どれくらいの割合で認知症になったか追跡調査を行いました。その結果、5年間でMCIの人の約5割が認知症を発症。しかし4割の人はMCIの状態を維持。残りの1割は正常レベルに戻っていました。この人たちは知らず知らずのうちに何か脳に良いことをした結果MCIから認知症に進まなかった可能性があります。それが何かを見極められればMCIの段階で認知症を予防できるはずです。MCIは認知症を予防するラストチャンスなのです。

 

これで見分ける!認知症のリスク

私たちの脳は常に様々な場所がめまぐるしく活動しています。何をする時にも離れた複数の場所が全く同じタイミングで活動しています。この離れた部分の繋がりは脳内ネットワークと名づけられました。脳内には様々なネットワークが存在し、それらは協力して働くことで私たちの脳は様々な機能を果たす仕組みになっています。実はMCIの人の脳ではこの脳内ネットワークに異変が起きていることが分かってきました。アメリカのワシントン大学を中心にしたチームが注目したのは脳内ネットワークの結びつきの強さです。MCIの人は正常な人と比べ脳内ネットワークの繋がりが弱まっていました。さらに認知症へ進むとネットワークの繋がりは衰えていきます。脳内ネットワークの弱まりをいち早く捉えられればMCIを早期発見できるはずです。実はその簡単な方法がアメリカの研究で見つかりました。それは歩行です。

 

歩き方でわかる!あなたの脳の衰え

MCIの疑いがある人は足腰が悪いわけではないのに歩く速さが遅くなります。さらに、MCIの疑いがある人は正常な人より歩幅が狭くなります。また足の裏にかかる圧力が一定ではなく、ふらつきやすいです。脳内ネットワークが弱まるとなぜ歩行が不安定になるのでしょうか?実は私たちが歩いている最中、脳内では視覚や空間認識に関わるネットワークが働き刻々と変化する周囲の状況を瞬時に判断しています。さらにバランスをとる時は体の感覚や運動に関わる運動ネットワークが働きます。こうした沢山のネットワークが同時に働くからこそ私たちは歩くことができています。ところがMCIの人はこれらの脳内ネットワークが弱まります。そのため歩くのが遅くなったりバランスが不安定になったりすることがあるのです。研究グループは実際に世界17カ国2万7000人の歩行データと認知症を発症するリスクの関係を調査。その結果、歩く速さがある基準より遅い人は認知症になる人の割合が1.5倍に、さらに記憶力の衰えの自覚もあると2倍に増えることがわかりました。要注意の歩く速さは秒速80cmです。周りの人に追い越されたり青信号を渡りきれなかったりすることがある速度です。

 

MCIの人に見られる変化の例

1、外出するのが面倒
2、外出時の服装に気をつかわなくなった
3、同じことを何回も話すことが増えたと言われる
4、小銭での計算が面倒お札で払うようになった
5、手の込んだ料理を作らなくなった
6、味付けが変わったと言われる
7、車をこすることが増えた

 

認知症は予防できる!世界の最新対策

脳内ネットワークを結び付けているのは神経細胞です。周りの血管から栄養と酸素をもらって活動しています。この神経細胞や血管に異常が起こることこそが脳内ネットワークの衰えの原因です。最近注目されている異常の一つが微小出血。細い血管がもろくなって起こるわずかな出血です。すると、その周辺の神経細胞が次々と死んでネットワークが傷ついてしまいます。実際、MCIから認知症へと進行するにつれ微小出血が見つかる人が増えることが分かっています。

 

イリノイ大学のアート・クレイマー教授は衰えた脳のネットワークを回復させる効果的な方法を見つけだしました。それは少し息がはずむ程度の早歩き。1回1時間、週3回が目安です。これだけで脳の血管や神経細胞に驚くべき変化が起こることが分かりました。早歩き程度の運動をすると血液中にVEGFという物質が多く放出され傷ついた血管の周りに新しい血管を作るように促します。さらに早歩きによってBDNFという物質も増えます。この物質は脳内で新たな神経細胞を生み出されるのを促します。こうして脳内ネットワークの繋がりが強くなると考えられるのです。

 

脳内ネットワークを改善させるのは早歩きだけではありません。フィンランドではMCIの疑いのある1260人に協力してもらいフィンガー研究という大規模な予防研究を行いました。フィンガー研究では早歩きなどの有酸素運動を1日30分程度行い、軽い筋力トレーニングも取り入れました。それに加えて行ったのが食生活の改善です。動物性脂肪や塩分を減らし、野菜や魚を積極的にとり神経細胞や血管を守ります。そして記憶力トレーニングを週3回10分程度行いました。さらに毎日の血圧管理。高血圧を防ぐことで脳内の微小出血を防ぎネットワークを守ります。こうした神経細胞や血管を守るライフスタイルを2年間続けました。その結果、取り組みをしなかった人に比べ認知機能が平均25%も上昇しました。

 

実用化が近づく認知症の予防薬

アメリカではMCIの人に向けた予防薬の開発が急ピッチで進められています。てんかんの治療薬として使われているレベチラセタムは脳内ネットワークを改善する働きがあることが新たに分かりました。実際にMCIの人に投与したところ記憶力が回復。2016年から最終の臨床試験を行い成功すれば2019年にはMCIの人の薬として使えるようになる見込みです。日本でもMCIの人を対象とした別の予防薬の研究が進んでいます。シロスタゾールは現在、脳梗塞の再発を防ぐために使われている薬です。この薬は脳の血管からの出血を防ぎ神経細胞や脳内ネットワークを守る効果が見込まれています。2015年の夏からMCIの人200人で臨床試験を開始。成功すれば2021年には実用化すると言います。

 

ついに登場!認知症予防システム

一方、地域ぐるみでMCIを早期発見する取り組みも始まっています。2015年9月から愛知県高浜市と国立長寿医療研究センターは市内の60歳以上1万人を対象に認知症のリスク検診を始めました。最新の検査手法を取り入れ歩く速さやリズムの乱れを計測します。専門家が積極的に地域に出てMCIや認知症のリスクをいち早く見つけ出そうというのです。さらに検診をきっかけに誰でも予防活動を続けたくなるような仕掛けも用意されています。全員にプレゼントされるのは活動量計。歩数はもちろん歩く速さも計測できる機械です。これで予防に効果的な早歩きを促します。家に閉じこもりがちな高齢者でも思わず歩いて訪ねたくなるようなスポットを市内全域にもうけました。ダンスや囲碁など脳内ネットワークを改善し認知症予防に効果があると考えられるメニューが実施されます。




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