土の不思議~解明!生命を育む力~|地球ドラマチック

NHK・Eテレの「地球ドラマチック」で土の不思議~解明!生命を育む力~が放送されました。春、植物は芽吹きの時を迎えます。植物の命を支えているのが土です。地球はかつて何十億年もの間、むき出しの岩に覆われていました。地球を生命に満ちた活気あふれる場所に変化させたのが土です。

 

植物が土に!

植物は生きていくために必要な栄養を土から得ています。土には養分があるからです。畑などに肥料をまくのは土の養分を補うためです。何度も植物を育てると養分が失われるからです。一方、自然の森の中では植物は元々土に含まれる養分によって支えられています。では自然の土はどうやって養分を補っているのでしょうか?枯れ葉や枯れ枝の中には養分が眠っていますが、植物が直接吸収するには硬すぎます。養分はどのようにして植物に届けられるのでしょうか?土の層は下に行けば行くほど葉や枝は細かく砕け、最後には分からなくなります。葉や枝は時間と共に分解され、中に含まれている養分が土の中に解き放たれます。自然の中で最も重要なプロセスの一つです。

 

菌類が枯れ葉を分解

枯れ葉や枯れ枝などを分解し養分を土に解き放つ菌類は、この類稀な能力によって自然界において重要な役割を果たしています。菌類が枯れ葉などを分解すると腐植と呼ばれる物質ができます。この腐植によって菌類は私たちの目には見えない生き物の世界を支えています。土は小さな生物たちの王国なのです。菌類に取り出された養分は生物が動きまわることによって土全体に行き渡ります。植物が育つ肥沃な土はこうして作り出されるのです。しかし、菌の力だけでは枯れ葉や枯れ枝などを全て分解するは不可能です。

 

ミミズは枯れ葉処理工場

ミミズが土に与える影響は絶大です。ミミズが地中に掘った穴は、まるで巨大な換気装置のように土全体に空気を巡らせます。生きる上で欠かせない空気をミミズのおかげで得る地中の生き物もいます。またミミズは菌類と同じく、枯れ葉を食べて消化し糞の形で養分を土に戻します。ミミズが土に与える恩恵はそれだけではありません。ミミズは驚くべき量の枯れ葉を分解します。まるで枯れ葉を処理する巨大な工場のようです。細長いチューブのような体の中で一体何が起きているのでしょうか?ミミズの体内には元々バクテリアが生息しています。ミミズの消化器官はほどよい湿気があり、中性でバクテリアが生息するのに適した環境だからです。バクテリアも枯れ葉などを分解します。地中では無数のバクテリアが活動し、枯れ葉などを次々と養分の豊富な土に生まれ変わらせています。その活動はミミズによって驚くほど活発になります。ミミズが排出した糞は周りの土壌と比べてバクテリアが約1000倍も活発に活動していることが分かっています。つまりミミズがバクテリアの活動を活性化させているのです。

 

砂や粘土 どう違う?

岩から出来た物質は粒の大きさによって砂、シルト、粘土の3種類に分けられます。大きさの違いは土にどのように作用するのでしょうか?土に水が浸透するスピード、いわゆる水はけは岩から出来た物質の粒の大きさによって変わります。注目すべきは粒子の密度だけではありません。粘土の粒子は表面の電気によって養分と水分を吸着します。吸着した養分や水分は植物や動物の成長を支えます。しかし問題もあります。粘土が多すぎると土が水を含みすぎ、水はけが悪くなるのです。一方、砂が多すぎると水はけが良すぎて養分が水と共に流れてしまい乾いた土になります。

 

生命と岩との出会い

土は生命に満ちた世界と冷たい岩の世界から出来ています。2つが合わさることで土は作られ、植物は水と栄養を得ます。では、生命と岩はいつどのようにして結びつき土が誕生したのでしょうか?氷河期の終わりになると、気温が上昇し氷が解けて岩がむき出しになりました。土が誕生するのに最初に必要なのは岩が崩れること。岩は隙間に氷が出来ることで割れていきます。水は凍ると膨張するからです。膨張という物理的な力によって岩が破壊される現象は物理的風化作用と呼ばれています。しかし、これだけではまだ土はできません。雨が必要です。雨は弱酸性です。酸性の雨が石灰岩に落ちると、石灰岩は溶けていきます。雨に当たることで岩が少しずつとける現象を化学的風化作用と言います。土への2つめのステップです。しかし、まだ土とはいえません。生命が欠けているからです。地衣類は藻類と菌類が結びついて出来た共生体。地衣類は岩も分解し内側の栄養を吸い取って成長します。地衣類は長い年月をかけて広がり、死んだ地衣類の上には新しい地衣類が生長します。死んだ地衣類が雨で溶けた岩の破片と混じることで土が誕生するのです。

 

生命との絶妙なバランス

土は生命のほとんどない岩の世界と生命に溢れた地上の世界が出会う場所です。そこには驚くほど複雑で、とても繊細な生態系が広がっています。生物は枯れ葉や枯れ枝などを分解し岩を砕くことで土を生み出します。一方で生物は土に依存しています。栄養や水分、生きる場所を土に与えてもらっているからです。土が脅かされれば生命も脅かされます。今、太古から続く生命と土のバランスがかつてない脅威にさらされています。要因は人類です。

 

地盤沈下が止まらない

人類が農耕を始めたと考えられるのは今から約1万年前。地質学的な時間で考えれば、ほんの一瞬です。しかし、そんなわずかな間に人類はかつてないほど土を大きく変化させてきました。イギリス東部のイースト・アングリア地方は湿地や小川が集まる場所として有名ですが、今ではほんの一部しか残っていません。人々は度重なる洪水に悩まされてきました。そこで17世紀以降、この土地で幾度となく排水が繰り返されてきたのです。しかし排水によって地盤が沈下し始めました。

 

失われる泥炭

湿地では泥炭と呼ばれる特殊な土が見られます。泥炭は含まれる酸素が少なく酸性です。この環境では地中のバクテリアやその他の微生物が枯れ葉などを分解するスピードが遅くなります。そのため枯れ葉などが分解されないまま、少しずつ堆積していくのです。これが重要な意味を持っています。植物は大気中の二酸化炭素を吸収して成長します。植物が枯れた後、分解されないと植物が吸収した二酸化炭素は土の中に閉じ込められます。泥炭は大気中の二酸化炭素を地中に蓄えておく上で大きな役割を果たしています。しかし、水を取り除くとバランスが崩れ、土に酸素が入り込みバクテリアや菌類の活動が活発になります。イースト・アングリアでも土のバランスが崩れ深刻な事態が起きています。イースト・アングリアでは毎年400万㎥の泥炭が失われています。活発になった微生物は泥炭の中の枯れ葉などを分解して二酸化炭素を放出。年に100万トン~150万トンの二酸化炭素が放出されていることに。環境が変わったことで本来なら土の中に閉じ込められているはずの二酸化炭素が放出されてしまっているのです。

 

農地開拓の末に・・・

20世紀に入りさらに深刻な事態が発生しました。アメリカ中西部を南北に走るグレート・プレーンズは1930年代に農地に生まれ変わりました。大規模な農業活動の結果、土のバランスが崩れてしまいました。日照りが続くと土は乾燥し風に飛ばされて巨大な砂嵐を巻き起こしました。およそ40万k㎡の土地が被害を受け1940年までに250万人が移住を余儀なくされました。それはアメリカ史上まれにみる大災害でした。しかし今、私たちを取り巻く問題は深刻さを増しています。世界の人口は70億を超え、過去にこれほどの人口が暮らしていたことはありません。人間は現在、より多くの収穫を望みかつてないほど土に依存しています。食糧を得るために私たちは土を耕し肥料をやり手を入れ続けています。その結果、土の繊細なバランスは崩れてしまいました。

 

雨で土が流される!?

イギリス南西部のある農地は危機的な状況に陥っています。アスパラガスを栽培しているジョンはある日、畑が侵食されているのを発見。栽培で弱った土が作物もろとも雨に流されていたのです。土壌学者のロブ・シモンズは土の侵食を研究しています。雨は雨粒の質量と速度によって運動エネルギーが変わります。雨が降るということは、その分の運動エネルギーが土の表面に衝突するということで土はダメージを受けます。雨が強くなると短期間に大きなエネルギーが発生します。また雨粒が大きくなると運動エネルギーが増し土の表面により大きなダメージを与えます。実験から大量の雨が降ると水はその場にとどまることなく土とともに流れ出すことが明らかになりました。科学者たちはこの減少を土壌流出と呼んでいます。シモンズは土壌流出にみまわれたアスパラガス生産者のジョンに3つのアドバイスをしました。1つ目は斜面にそって真っ直ぐに作物を植えず斜めに作付けすること。2つ目は間に草を生やすこと。こうすることで水の流れを遅らせ土を浸食する力を減らします。3つ目は藁で覆うこと。藁で覆うと藁が雨の衝撃を吸収し、雨は土に当たる前に砕け散ります。シモンズが提案した農法は周囲の農家にも受け入れられました。過去の過ちから学び貴重な資源である土を守る動きは徐々に広がっています。