火山大噴火 迫りくる地球規模の異変|NHKスペシャル

NHK総合テレビの「NHKスペシャル」で巨大災害MEGA DISASTER 第4集 火山大噴火 ~迫りくる地球規模の異変~が放送されました。110の火山が集中する日本列島。小笠原諸島の西之島では溶岩で島が急速に拡大しています。今、大規模な噴火が懸念されている九州の桜島。地下に大量のマグマが溜まっていることが明らかになりました。太古から幾度となく人類を襲ってきた火山の大噴火は人々を翻弄し多くの命を奪ってきました。今、世界の科学者たちは最新の技術で迫り来る巨大噴火の脅威を読み解こうとしています。

 

地球最大規模 見えてきたマグマ

世界には1500もの活火山があります。アメリカのイエローストーン国立公園には地球最大規模の火山があります。地下のマグマの影響で数百箇所から熱水が噴き出しています。この広大な地熱地帯ではかつて何度も巨大噴火が起きています。最後の噴火が起きたのは64万年前。火口は直径およそ60km。東京23区がすっぽり入る大きさです。火山灰はアメリカ全土の半分近くに積もり1500km離れた地域でも厚さ3mに達しました。そのイエローストーンで近年異変がとらえられています。アメリカ地質調査所のジェイク・ロウアンスターン主任研究員は地盤の急激な上昇を観測しています。わずか2年で最大12cmも上昇。それまで見られなかった急激な変化です。その範囲は東西80km、南北30km。今も変化は続いています。イエローストーンの噴火は近づいているのかを探る研究が進められています。ユタ大学のジェイミー・ファレル研究員はイエローストーンで起きる地震を分析し地下のマグマをとらえようとしています。地震の揺れ地震波は地下の硬いところでは速く伝わり、柔らかい所では遅く伝わります。多くの地震波を分析することで硬い所とマグマがあり柔らかい所が立体的に浮かび上がります。これにより東西80km、南北40kmの巨大なマグマの塊「マグマだまり」が見つかりました。世界で確認されている中で最大の大きさです。なぜ巨大なマグマだまりができたのでしょうか?

 

地球の内部には中心部に高温の核、その外側にマントルがあります。核の近くからホットプルームと呼ばれる高温のマントルがイエローストーンに上がってきています。ホットプルームは地下60km付近まで上昇。温度は1500℃近くに達しています。この熱が上にある岩石を溶かし、大量のマグマを生み出します。その結果、巨大なマグマだまりができるのです。イエローストーンは将来噴火する可能性がありますが、その時期や噴火の規模はまだ分かっていません。

 

最新科学が探る日本のマグマ

2013年11月に噴火が始まった小笠原諸島の西之島は、海底から噴出する溶岩で拡大を続けています。九州の霧島連山の新燃岳は3年前に噴火し多くの火山灰を降らせました。日本に火山が集中しているのは地下の独特な構造に秘密があります。今、科学者たちはその地下の姿をとらえはじめています。東北大学の中島潤一准教授は地震波を使って東北の地下の構造を詳細に分析。マグマが生まれているのは沈み込んだプレートの上、地下100km付近です。周りにはイエローストーンのような高温のホットプルームはありません。なぜマグマができるのでしょうか?愛媛大学の井上徹教授はマグマの発生に水が関わっていると考えています。地下100kmの高温・高圧の世界では水の分子が活発に動いています。その激しい動きで岩の分子がバラバラにされます。これによって岩が溶けマグマになるのです。日本の地下の海底から沈み込むプレートは大量の水を含んでいます。地下100km付近に達すると高い圧力と温度によって水が染み出します。この水がマントルの岩石を溶かしマグマが生まれます。日本ではプレートの動きによってマグマが作られ火山の下に上昇しているのです。日本の地下で作られるマグマは毎年11億トンにのぼると推定されています。プレートが動き続ける限り噴火は続いていくのです。

 

明らかになる火砕流の脅威

世界で火砕流の脅威の最もさらされているのがインドネシアです。インドネシアでは日本と同じようにプレートが沈みこみ130もの活火山が連なっています。去年から噴火が相次いでいるシナブン山では火砕流が度々発生し、2014年2月には16人が亡くなりました。多くの命を奪った火砕流はどのように起きたのでしょうか?火口から噴出したマグマが高温の溶岩の塊となります。マグマが上昇するたびに溶岩は大きくなっていきます。そして熱い溶岩が崩れた時、火砕流が発生。火砕流の中では砕けた溶岩の中から高温のガスや水蒸気が噴き出します。その温度は500℃以上。火砕流は膨張しながら斜面をかけおり、その速さは時速100kmにもなります。シナブン山の火砕流は山頂から5km近く流れくだり大きな被害を及ぼし、麓の人々は半年以上に渡って避難生活を強いられています。

 

都市を襲う大火砕流

火砕流がより広い範囲に及ぶと危惧されているのがイタリアのベスビオ山です。ベスビオ火山観測所のルチア・パッパラルドさんは火口に変化がないか毎月調査を続けています。パッパラルドさんが危惧しているのは2000年近く前に起きた大噴火の再来です。この時の噴火では噴煙が高さ数万メートルに達したと考えられています。噴煙に含まれる高温の岩石や火山灰が重みで崩れ落ち巨大な火砕流が発生しました。噴煙柱崩壊型と呼ばれる火砕流です。火口から5km離れた町では、建物に逃げ込んだ人々が一瞬のうちに命を落としていました。火砕流は10km先にも達していました。犠牲者は2000人以上。町そのものが消滅したのです。この火砕流は火口から全ての方向に流れ、被害は広範囲に及んでいました。シナブン山の火砕流と比べると30倍以上の広さになります。パッパラルドさんたちはベスビオ山の火山活動の監視を続けています。科学者たちの分析によると、地下5km付近に過去の大噴火に匹敵する大量のマグマが溜まっていることが分かりました。イタリア政府は火砕流の恐れがある範囲を公表しています。この地域には60万もの人々が暮らしています。

 

大噴火を予測する火山研究の最前線

鹿児島市の桜島は2006年から活発な噴火活動が続いています。2013年8月には噴煙が火口から5000mの高さまで上がりました。10km離れた市の中心部でもしばしば大量の火山灰が降り市民の生活に大きな影響が出ています。1914年には大正大噴火が起きました。国内では過去100年で最大の噴火です。噴煙の高さは8000m、火口からは大量の溶岩が流れ麓の集落を飲み込みました。地震も発生し58人が亡くなりました。桜島の火山活動を研究している京都大学の井口正人教授は、再び大噴火が起きるのではないかと危惧しています。その理由は桜島の周辺でとらえられている地盤の変化です。大正の大噴火の直後、鹿児島湾の北部では地盤が最大1m近く沈下しました。地下のマグマだまりからマグマが大量に噴き出したために地盤が沈下したと考えられています。大正大噴火で1m近く沈下した地盤は、その後毎年1cmほどのペースで上昇。現在は大正大噴火の直前の高さに迫り、地下にはすでに大量のマグマが溜まっていると推定されています。

 

地下5km付近に幅1km、厚さ10m程のマグマだまりがあることが分かっています。また地下8km付近にも大きなマグマだまりが確認されています。幅は少なくとも5km以上あると考えられています。大きなマグマだまりがあるのは鹿児島湾の真下。大正大噴火で大量のマグマを噴き出した所と考えられます。大噴火を予測する上で注目すべきデータも見つかりました。それは温度の変化です。2010年は温度が上がり、噴火の回数も増加。地下5kmのマグマだまりには下から高温のマグマが上昇していたと見られます。大噴火の直前には大量のマグマが上昇して、さらに大きな変化が現れると考えられます。井口さんたちは迫り来る大噴火に備えて桜島のマグマの動きを探り続けています。

 

巨大噴火が招く地球規模の異変

巨大噴火の可能性が指摘されているアメリカのイエローストーン。科学者たちは噴火の兆候を見逃すまいと監視を続けています。巨大噴火が起きた時、どのような事態が想定されるのか、その手がかりとなるのが1991年のフィリピン・ピナツボ山の大噴火です。噴煙は上空4万mに到達し、20世紀最大の噴火でした。大量の火山灰が上空を覆い、昼間でも夜のように暗くなりました。日光がさえぎられ、1年後の地球の平均気温は0.5℃低下しました。2年後、日本も記録的な冷夏となり米が不作となりました。噴火が影響していたと見られています。イエローストーンの噴火の規模は最悪の場合、ピナツボ山の100倍以上にもなります。より深刻な事態が懸念されます。アメリカやヨーロッパの科学者が共同で作成した巨大噴火のシミュレーションによると、膨大な量の火山灰や火山ガスが上空5万m付近まで到達。風に流されて拡散していきます。噴出物は約2週間で地球を1周し、長期間に渡って上空にとどまります。大量の噴出物で日光が遮られ、世界中で気温が下がります。巨大噴火の1年半後、地域によっては気温が10℃も低くなると予測されています。「火山の冬」と呼ばれる急激な寒冷化が起きるのです。広い範囲が雪や氷に閉ざされ、各地で食料問題が発生。地球規模の影響が危惧されています。

 

地球の壮大な営みが生み出す火山の大噴火。私たちはその脅威から逃れることはできません。大噴火の兆候をとらえ、どう命をつないでいくのか。まだ見ぬ巨大災害に向き合わなければならないのです。