ドラッグ・リポジショニング 創薬が変わる!|サイエンスZERO

NHK・Eテレの「サイエンスZERO(サイエンスゼロ)」で創薬が変わる!ドラッグ・リポジショニングが放送されました。様々な病気やケガを治してくれる薬ですが、新薬の開発がとても難しくなっています。薬の材料となる化合物が出尽くし、新薬の数が頭打ちになっているのです。そんな中、既存薬を別の疾患に使う取り組みに注目が集まっています。それがドラッグ・リポジショニングです。

それにより糖尿病に使われているメトホルミンが、がんの治療に効果があることが分かってきました。また高脂血症の薬であるスタチンが脳梗塞の発症を抑制することも分かっています。

新薬を開発するにはまず、化合物の基礎研究から始まり、動物や人への臨床試験を経て、長い場合は15年もかかり1000億円もかかると言われています。それでも結果的に薬になるのは3万分の1の確率です。そんな中、開発費や開発期間を大幅に減少させることが出来るのがドラッグ・リポジショニングなのです。

 

潜入!最新のドラッグ・リポジショニングの現場

国立循環器病研究センターの研究で、心不全の薬カルペリチドが肺がんの転移を抑えることが明らかになりました。この新たな効果を発見したのは医師の野尻崇(のじりたかし)さんです。野尻さんは循環器の手術や治療にいそしむ心臓一筋の外科医でした。ところが10年前、呼吸器の病院に異動することになったのです。新しい病院では肺がんの手術に追われる日々を送っていました。肺は一部を摘出すると心臓への負担が増え、不整脈を併発することが少なくありません。カルペリチドは呼吸器の治療では名前すら知られていない薬でしたが、野尻さんは肺を摘出した患者にも投与してみることにしました。手術後、患者は心臓の大きなトラブルもなく順調に回復していきました。そんな中、患者の予後データを見ていた野尻さんは偶然あることに気づきました。肺がんは5割に患者が転移するという他の臓器のがんに比べて、特に再発しやすい病気です。ところが、カルペリチドを投与した患者は投与しなかった患者に比べて転移率が3割と少なかったのです。野尻さんはマウスで効果を確かめました。一体なぜ心臓病の薬が肺がんに効果があるのでしょうか?

野尻さんはカルペリチドが血管中のEセレクチンを抑えていることを突き止めました。Eセレクチンは血管の中に炎症が起きると発生する物質です。炎症が起きると大量の物質が流れます。これを抑えようと流れてくる物質を血管の壁にくっつけてしまうのがEセレクチンです。肺がんの手術をすると炎症が起きるため多くのEセレクチンが発生します。ここにがん細胞が付着することで転移が起きるのです。そこで登場するのがカルペリチド。これまで知られていなかった新たな作用でEセレクチンの発生をおさえます。そのため、がん細胞が付着しにくくなるのです。現在10か所の病院で治験中です。

 

ドラッグ・リポジショニング驚きの薬探し!

コネクティビティマップ(Cmap)と呼ばれる遺伝子発現のデータベースはハーバード大学などによる運営サイトで薬の材料となる1309種類の化合物が、どの遺伝子の発現に関わっているか公開されています。例えば、大腸がんに効く薬を探したい場合、大腸がん患者の発現量が異常な遺伝子の名前を入力すると、大腸がんを抑制する可能性のある化合物のリストが表示されます。選ばれたのは305種類。頭痛薬アスピリンもランクインしています。アメリカでは大腸がんの薬としてすでに実用化されています。

 

ドラッグ・リポジショニングが生んだ世界初のがん治療!

2015年、世界初のがん治療法が日本から発信されました。抗がん剤が効かなくなったがん細胞を、ある既存薬で再び効くようにさせるというのです。研究されたのは前立腺がん。その治療で問題となっているのは、抗がん剤に対する耐性です。一度耐性がつくと抗がん剤の効果がなくなり、治療を断念せざるおえません。そんな中、抗がん剤の効果を再び引き出してくれる薬がドラッグ・リポジショニングで見つかったのです。それがC型肝炎の治療薬リバビリンです。

がん細胞は急激なスピードで分裂し、増殖していきます。抗がん剤はこの増殖をおさえ、がん細胞を増やさない作用があります。ところが、抗がん剤を使い続けると増殖できないがん細胞を分裂のスピードを落とします。その代わり、自分の周りにガードを作って抗がん剤を受け付けないようにします。これが耐性です。そこで効果を発揮するのがリバビリン。これを投与すると不思議なことにガードが壊れ、急速な分裂をする状態に戻ります。こうして再び抗がん剤が効くようになるのです。

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