レンブラントの「夜警」|美の巨人たち

テレビ東京の「美の巨人たち」でレンブラントの「夜警」について放送されました。古くから世界三大名画と呼ばれている作品があります。レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」、ディエゴ・ベラスケスの「ラス・メニーナス」、そしてレンブラント・ファン・レインの「夜警」です。

 

「夜警」は縦3m79cm、横4m53cmの油彩画の大作です。「夜警」とは後につけられたタイトルで、誕生当初は「隊長フランス・バニング・コックと副隊長ヴィレム・ファン・ライテンブルフの市民隊」と呼ばれていました。暗い背景に目をこらしてみると、門のような建物が描かれています。その前に市民隊の男たちが集まっているのです。後ろで窮屈そうにひしめく男たちは表情もわからぬほど粗く素早いタッチで描かれ、手前にくるにつれて絵具の量はこってりと増え表情も克明になっていきます。前景の光の中に浮かび上がる隊長と副隊長の描き方は圧巻です。強烈な光と闇、鮮烈な色彩のコントラストがドラマチックな迫真の世界を作り上げています。

 

17世紀のアムステルダムは世界屈指の貿易都市として繁栄をきわめていました。そんな時代、裕福な人々の間で流行したのが集団肖像画です。組合や同業者の仲間たちがお金を出し合い、自分たちの肖像を画家に依頼したのです。市民隊を組織し町を守り続けてきた火縄銃組合の男たちは1638年、集会所の壁を飾るために集団肖像画の制作を決めました。隊長のコックと副隊長のライテンブルフが依頼したのが、当代一の画家であったレンブラント・ファン・レインでした。ところが完成した作品は集団肖像画の常識を覆すものでした。これまでの集団肖像画はほとんどが記念撮影のように横一列に並び、人物は均等に描かれています。ところが、「夜警」は整然と立っている者は一人もいません。人物の描き方も均等ではないのです。光の中で克明に描かれている者もいれば、暗闇のなか満足に表情すらわからない者もいます。

 

「夜警」の中には多くの直線が隠されています。一つは左側の帽子をかぶった男が掲げる旗竿。内側へと斜めに切れ込むような直線です。その線と平行しているのが赤い衣装を着た男が持つ銃と、隊長が右手に持つステッキ。もう一つは甲冑姿の男が持っている長い槍。その線にそって人物が並べられています。さらに冑をかぶったヒゲの男が持つ銃の線と副隊長が持つ槍の線が平行におかれています。2本の直線は直角に交わっています。このラインを使った構図の中で男たちは互いに反応しながら動きの連鎖を生んでいるのです。さらに火縄銃組合を象徴するアクションも巧みに描かれています。左端の子どもが持っているのは動物の角を使った火薬入れ。隣の赤い衣装の男はその火薬を銃にこめています。傍らの冑で顔を覆った男は隊長の背後で銃身を上に向け引き金を引いています。銃口からは炎が。ヒゲの男は撃ち終えた銃に残った火薬を息で吹き払っています。発砲する一連の動きを4人の人物で表現しているのです。背後の建物のアーチの部分に描かれている銘板には集団肖像画を依頼した人々18人の名前が記されています。しかし「夜警」には31人が描かれています。そして実はレンブラントが描いたのは34人でした。

「夜警」は描かれた当初もっと大きかったのです。「夜警」は1715年に火縄銃手組合本部からアムステルダム市庁舎に移されました。その時、大きすぎたために一部が切り取られてしまったのです。上の部分が25cm、右側が10cm、下側が10cm、左側が60cm程切り取られました。その切り取られた左側には人物が3名描かれていました。当初の絵では隊長と副隊長が描かれていたのは中央ではありません。彼らは絵の中央に向かって今まさに踏み出そうとした瞬間だったのです。この2人のアクションが画面全体に強い躍動感を与えています。

 

隊長と副隊長と共に目立つのが光が当たらないはずの場所にいる女性です。レンブラントは構図の線が交わる場所に描いています。見る者の視線を彼女に誘導するように。この女性は一説にはレンブラントの妻サスキアだと言われています。レンブラントは28歳の時に名家の出身であるサスキア・アイレンビュルフと結婚し画家としての成功の道を歩み始めました。しかし私生活では悲しい出来事が続きました。サスキアとの間に生まれた3人の子どもを病で失い、さらにサスキアも結核に侵されてしまったのです。レンブラントは妻の闘病中に「夜警」を描いていました。そして完成直前にサスキアは亡くなってしまいました。。レンブラントが34名も描いた理由は妻サスキアを描き込むためだったのかもしれません。そしてレンブラント自身も絵の中に隠れています。後ろで目だけ出している男だそうです。

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