障害プラスα ~自閉症スペクトラムと少年事件との間に~|NNNドキュメント

日本テレビの「NNNドキュメント」で障害プラスα~自閉症スペクトラムと少年事件との間に~が放送されました。2014年の少年による刑法犯の検挙人数は戦後最小となりました。そのため、不可解な事件が目立つようになりました。2014年7月26日、長崎県佐世保市で起きた同級生殺人事件。逮捕された少女は高校1年生、15歳でした。彼女は動機を「人を殺してみたかった」と語りました。家庭裁判所は自閉症スペクトラム障害の中でも特殊な例としながらも、この障害の特性などが殺人の欲求に大きく影響していると述べました。

 

自閉症スペクトラム障害とは発達障害の一種で、脳機能の発達が関係する先天性の障害です。コミュニケーション能力や相手の気持ちを思いやる能力、社会性に問題があるとされています。さらに、自閉症スペクトラム障害には個人差があるため周りが気が付かない場合も多いです。個性の一つとしてとらえられ、特定の分野においては驚異的な能力を発揮することもあります。アメリカの精神医学会ではアスペルガー症候群と自閉症などが自閉症スペクトラム障害に統一されました。日本もこれにならいつつあります。障害と少年事件は直接結びつくものではありません。しかし、これらの2つを繋いでしまう何かの存在があるのかもしれません。

 

浜松医科大学特任教授の杉山登志郎さんは非行性のある少年たちの自立を助ける児童自立支援施設で調査を行いました。すると、当時入所していた102人のうち75%以上に自閉症スペクトラム障害があることが分かったと言います。しかし、これは障害=犯罪ということではありません。発達障害だけでは何も起きません。発達の障害や発達の凸凹だけでは問題行動になることは少なく、そこにプラスαの要因がないといけません。杉山医師が言う「プラスαの要因」とは一体何なのでしょうか?

 

宮川医療少年院では自閉症スペクトラム障害を含む発達障害や、知的障害がある少年が生活しています。収容期間は1年程度、12~20歳までの約50人の少年たちが出所後仕事に就けるよう作業活動を行っています。

「友達とそういうビデオを見たりしていたんで、やりたい気持ちとかになってそれだけでやった。学校で何かをしろって言われたりジッとしとくことが僕がイライラしてきたりして暴れることになった。教室でも誰かがやっていてできてて僕に質問された時とかできなかったりしたら、机とか蹴ったりして教室出て行ったりしてました」(14歳 強制わいせつ)

「駅の券売機を壊しちゃった。ジュースをぶっかけたんですよ。券売機に。そしたら壊れちゃって。自分は人を殴ったりとか、そういうのは嫌いなんですよ。だからものに当たっちゃったって感じですね。イライラは結構あったんで。先生にちょっと怒られたことで納得がいかなくてイライラしたりとか。自分で自覚してないのになんかバーッて怒られたりすると、なんでみたいな。なんでそうなるのって思っちゃって」(14歳 器物損壊)

「前にいた施設の先生に暴力をしてしまって。たぶん結構殴ったり蹴ったりしてたと思う。15発くらい蹴った。その前、家にいたときも家でなんか暴れたりして警察に連絡されて。思い通りにならなかったりとかしたら反抗してたと思う。パソコンとかずっとしてたかったけど、まあできなかった」(15歳 傷害)

「スマホの窃盗です。2,3回繰り返してます。最初はお菓子やおもちゃだったけど、もっと難しいものを盗みたいっていうようになってスマホに変わってって、それが失敗して今ここにいます。盗む最中はなんか視線とかを感じてドキドキするけど、お店を出て誰もついて来てないと思ったら、なんか達成感があります」(16歳 窃盗)

 

児童自立支援施設とは犯罪などの不良行為をしたか、もしくはする恐れのある少年たちを自立させるための場所です。児童相談所による措置と、家庭裁判所からの送致で入所した少年たちはここで進学に向けた支援を受けます。入所者の中で自閉症スペクトラム障害の傾向がある少年たちに話を聞いていました。

「万引きとか人のもの盗ったり、放火とかもしてしまったりしてました。リサイクルショップに火をつけてしまった。もともとアクション映画がめっちゃ好きやって、そういうのには爆破シーンとかそんなことがあって、それも実際やってみたいというのがその時いっぱいあって、それを実際やってしまった。それにハマったというか、そういうのになったらどうしても止まらなくなってしまう。学校のストレスとかアカン方法でストレス発散してしまって」(14歳 中学2年生)

 

京都工芸繊維大学特定教授で元家庭裁判所調査官の藤川洋子さんは30年間で5000件を超える少年事件を担当しました。その中であることに気づいたと言います。

「自閉症スペクトラム障害イコール犯罪ではないんですけれども、さまざまな要因が結びついて犯罪に至ってしまうという事例はあります。自閉症スペクトラム障害という視点から分析することが大事だし、実際そういう鑑定例とか鑑別が行われた事例を経験しています」

 

自閉症スペクトラム障害などの発達障害の診断を受けた親が200人以上集まっているアスペ・エルデの会。親たちは障害と犯罪の関連性についてどう考えているのでしょうか?

「短絡的に結びつくなんてとんでもなくて、同じように思われたくない。うちは違う。たまたまであって皆さん同じように思われるのは心外です。実は本人が一番とにかく困っている」

 

杉山医師はプラスαの要因は迫害体験だと言います。過剰な叱責や学校でのいじめなど。杉山医師は自閉症スペクトラム障害に過剰な叱責や虐待、ネグレクト、学校でのいじめがプラスαの要因として加わると犯罪に繋がる可能性が高まると言います。自閉症スペクトラム障害がある子どもは育てにくいところがあるため、親の叱責や虐待を受けやすいです。杉山医師の調査によると、彼らが身体的虐待を受けると非行に走ってしまう確率は3.7倍、ネグレクトだと6.3倍にも増えると言います。

トラウマとは精神的ショックや恐怖が原因で起こる心の傷です。自閉症スペクトラム障害がある人がトラウマを蘇らせてしまうと興奮状態になったり、気持ちが滅入ったりします。そして、その恐怖や辛さから逃れるために攻撃的な行動に走ることがあります。さらにトラウマは脳の様々な場所の形や働きに異変を引き起こします。通常では自閉症スペクトラム障害が犯罪に繋がることはありません。しかし、トラウマがそれらを結び付けてしまう要因になることがあると杉山医師は言います。杉山医師はそんなトラウマを見つけ出して処理する治療を行っています。

 

宮川医療少年院では再犯を防ぐ試みが行われています。児童精神科医の宮口幸治さんは6年前にここに赴任しました。そして少年たちを診察する中で、少年たちは認知機能が弱いことが分かりました。認知機能が正常に働いていると五感による情報を正確に認知し、正しい行動に移すことができます。しかし、認知機能が弱いと、特に見る聞くことから得る情報は正しく認識されず自分では間違っていないと思っていても誤った行動に出てしまいます。認知機能が弱いことが少年たちの生きづらさに繋がると言います。

 

自閉症スペクトラム障害の特徴

・認知機能の弱さ
・身体的不器用さ
・融通の利かなさ
・感情理解の乏しさ
・対人スキルの乏しさ
・不適切な自己評価

 

これらを改善するトレーニング「コグトレ」を作り上げつつあります。コグトレは週に2度、90分間行われています。まずは6つの特徴の中の認知機能の弱さを改善します。聞く力を身につけるのです。教官が読み上げる文章を聞いて、最初の言葉だけを記憶します。さらに文章の中に動物の名前が登場すれば手を叩かなければなりません。しかし、動物の名前に気を取られていると最初の言葉を忘れてしまいます。次は身体的不器用さを改善します。新聞紙を丸めた棒を投げ、相手に渡します。相手との距離感を養うためです。実生活でも人にモノを渡す時には力加減を考え、相手が受け取りやすいように渡さなくてはなりません。残る4つの機能を改善するトレーニングは現在開発中です。正確な認知の力、体の上手な使い方を身に着けることで少年院を出た後に、社会での活躍の場が広がります。コグトレは少年院以外にも広がりつつあります。

 

2012年、文部科学省が全国の公立小中学校を対象にある調査を行いました。発達障害の可能性のある子どもがクラスにどれくらいいるのかです。結果は6.5%。35人クラスでは2人を超える割合です。大阪府にある和泉市立国府小学校では新たな試みが始まっています。通常の授業についていくのが困難な子どものための特別支援学級です。1年生から6年生までの7人が通っています。勉強だけでなく生きづらさも改善してくれるというコグトレには大きな期待が寄せられています。自閉症スペクトラム障害の傾向がある子どもたちに日常で感じている悩みを聞いていました。

「友達がやってるとしたら自分となんか違うと思う。すぐなんか持って来なあかんやつとかが忘れる」(10歳 5年生)

「たぶん失敗すると思う、将来。失敗ばかりする。やるのが苦手。頭使うのが」(11歳 5年生)

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