発電菌 微生物から電気をおこせ!|サイエンスZERO

NHK・Eテレの「サイエンスZERO(サイエンスゼロ)」で微生物から電気をおこせ!発電菌研究最前線が放送されました。発電菌を使った微生物燃料電池の研究が世界中で進められています。なんと発電菌がエネルギー問題も救世主になるかもしれないと言うのです。

 

発電菌を使って田んぼで発電

東京薬科大学生命科学部の渡邉一哉(わたなべかずや)教授は微生物の研究を行っています。渡邉さんは2004年から発電菌に注目。発電菌が生み出す電気をエネルギーとして利用できないか研究を重ねてきました。発電菌の一つジオバクター菌、大きさはわずか1000分の2ミリ。ジオバクター菌が多く生息しているのが田んぼの土の中。そこで渡邉さんは2007年から田んぼで発電する実験を行っています。マイナスの電極を田んぼの土の中に、プラスの電極を水の中に置きます。稲が太陽の光を浴びて光合成を行うと根から酢酸などの有機物が出てきます。土の中にいる発電菌はこの有機物をエサとして体の中に取り込みます。そして有機物を分解するさいに体の外に電子を放出。この電子はマイナス極で回収され回路を通ってプラス極に移動します。このときに発生する電流で電気を得るという仕組みです。1㎡あたりの発電量は約50mW。携帯音楽プレーヤーを動かせるくらいの電力が得られるのです。

 

発電菌が電子を出す仕組み

人間を含む全ての生物は生きるために食料を食べてエネルギーを取り込みます。このとき、食料である有機物は体の中で分解されます。実はその過程で電子が発生し、その電子を体の外に放出するサイクルを持っています。人間などの酸素呼吸をする生物は、この電子を酸素と反応させ水に変えて体の外に放出しています。一方、発電菌が発見されたのはアメリカ・ニューヨークにあるオナイダ湖。酸素がほとんどない湖底です。この環境で発電菌はどのようにして電子を体の外に放出しているのでしょうか?実は発電菌は体の外に電子を放出する独自の経路を持っています。細胞膜に電子を通す特殊なたんぱく質があり、細胞の中から外に電子を移動させることができるのです。つまり、有機物を食べて発生した電子を、そのまま体の外にある金属などに放出することができます。この電子こそ発電菌が生み出す電気の源なのです。

 

微生物燃料電池の問題点

発電菌にエサである有機物を与えると発電量が増えますが、時間が経つと有機物を増やしても発電菌を増やしても発電量は増えなくなります。原因は電極につくことができる発電菌の数が限られているためです。つまり、せっかく発電しても電極から離れた場所にいる発電菌の電子を回収することができないのです。この問題を解決するため渡邉さんは発電菌の生態を一から見直すことにしました。シュワネラ菌が発見された湖の底には鉄が多く含まれていることに注目。そこでシュワネラ菌の生息環境に近い条件にしようと鉄を加えてみることにしました。すると発電量が5~10倍に増えることが分かったのです。これは鉄の粒子が電極の周囲に付着して離れた場所にいる発電菌の電子を届ける役割を果たしているためと考えられます。さらに電極の素材や形にも工夫を加えました。こうした改良を重ねることで発電量は研究開始当時に比べて50倍にまで増えたのです。

 

発電菌を使った画期的な廃水処理

下水処理に発電菌を使うと発電だけでなく大幅な省エネ化にもつながると期待されています。現在、世界で最も普及している廃水処理は微生物を利用した活性汚泥法と呼ばれる方法です。廃水には汚れのもととなる有機物が入っています。これを微生物に分解させることで水をキレイにするのです。このとき、微生物は酸素を取り込んで有機物を二酸化炭素と水に分解します。そのため微生物が効率的に有機物を分解するにはタンクに大量の酸素を送る必要があるのです。下水処理場では全電力の約40%を酸素を送る送風機に使用しています。そこで注目されているのが発電菌を使った廃水処理システムです。発電菌は酸素を必要としないためタンクに酸素を送る必要がありません。つまり送風機を動かすための膨大な電力は一切必要なくなるのです。さらに廃水中の有機物をエサとして取り込み、分解しながら電子を放出するので発電までできてしまうのです。発電した電力はポンプなどを動かす電力として利用することができます。この未来型の廃水処理システムに国も大きな期待を寄せています。2012年から国が中心となり大学や民間企業と連携して研究が行われてきました。廃水を使って実験を行ったところ省エネや発電の効果により消費電力を大幅に削減できることが確認されたのです。

 

さらに!発電菌を使って枯渇資源を回収

リンは化学肥料として広く使われていますが日本ではほぼ全てを輸入に頼っています。そんな中、岐阜大学が発電菌を使ってリンを回収することに世界で初めて成功しました。研究を行っているのが廣岡佳弥子さん。養豚廃水にはマグネシウムやアンモニア、リンが大量に溶けています。発電菌が発電を始めるとマイナス極の周辺が酸性に、プラス極の周辺がアルカリ性になることが知られています。リン酸マグネシウムアンモニウムはアルカリ性で結晶化する性質があるためプラス極に出てきます。微生物燃料電池を使うことでエネルギー問題と資源問題の両方を解決できると期待されています。

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