ホットバルーンカテーテル治療|たけしのみんなの家庭の医学

心房細動とは、加齢や高血圧によって発生した心臓の異常な電気信号が不整脈や動悸を引き起こす病です。この心房細動と脳梗塞の因果関係が医学界では重要視されています。心房細動が長引くと異常なリズムが続く心臓に血流が滞りうっ滞。すると、血栓が作られ、その血栓は血流に運ばれ脳へ。脳の血管を詰まらせることで脳梗塞を引き起こしてしまうのです。

 

 

神奈川県三浦郡にある葉山ハートセンターに、世界でも初めてというバルーンを使った最先端の心房細動治療を行う名医がいます。それは佐竹修太郎(さたけしゅうたろう)先生。40年以上のキャリアに裏打ちされた確かな技術で、のべ1万人もの患者を救ってきました。国内屈指の心房細動治療のエキスパートにしてバルーンを用いた医療機器の生みの親です。

 

ホットバルーンカテーテル

機器の正式名称は「ホットバルーンカテーテル」従来の発作性心房細動の治療法では50~80%とバラつきがあったのに対し、ホットバルーンカテーテルを使った治療では約90%以上と治療効果の大幅な改善を実現したと言います。

 

そんな佐竹先生の研究は、アメリカの医学界でも大きな話題となり、権威ある医学雑誌に取り上げられるなど、バルーンの画期的な効果が熱い注目を浴びています。

 

ホットバルーンカテーテル開発秘話

佐竹修太郎さんは、昭和44年に東京医科歯科大学医学部を卒業。すぐに有望な循環器内科医としてバリバリ働き始めました。そんな佐竹修太郎さんが研究にのめりこんだのが不整脈。心房細動の研究でした。

 

実は佐竹修太郎さんが幼少の頃に、祖父が心房細動による脳梗塞を発症。幼い脳裏に寝たきりになった祖父の悲惨な姿が焼き付いていたと言います。それが佐竹修太郎さんを心房細動の研究にかりたて、1人でも多くの患者さんを脳梗塞の恐怖から解放したいと考えていました。

 

ところが15年程前、母親の俊子さんが心房細動から脳梗塞を発症してしまいました。俊子さんは緊急の措置のかいもむなしく半身不随に。以前から母に心房細動があることは知っていたのに、脳梗塞から防いであげることができなかったと断腸の思いにさいなまれました。そして、これを機に佐竹修太郎さんの心房細動の研究は加速していきました。

 

そもそも従来の心房細動の手術では、心臓内で異常な電気信号を発している場所をカテーテルの先につけた電極により焼いていくというものでした。異常信号が一か所だけなら問題ないのですが、複数の場所から発生していることがほとんど。そのため全てを焼き切るのは難しいのが実情でした。佐竹修太郎さんはどうやったら何か所もの異常信号を満遍なく焼き切れるのか考え続けました。

 

そして閃いたのが、カテーテルの先にバルーンを付け加熱することで、点ではなく面で心臓から出ている複数の異常信号を満遍なく焼き切るというものでした。数か月後、佐竹修太郎さんは自ら大手医療メーカーにかけあいました。この画期的なアイディアにメーカーも大絶賛。すぐに開発契約を結ぶことに。その2か月後には試作機も完成。実験を重ねて安全性と効果を確かめ、2002年には所属する病院内限定で臨床試験をスタートさせました。

 

翌年には別の病院でも臨床試験が始まり、2005年には正式な医療機器として認可を受けるための最終審査の段階へと進んでいきました。それはPMDA(厚生労働省所管の独立行政法人)医師や医療メーカーが開発する医療機器はPMDAの審査チームによって、医学や薬学・工学など様々な見地から安全性や有効性が科学的に厳しく審査され、これをクリアしなければ厚生労働省による保険適用の認可が得られないのです。

 

しかし、臨床試験の中で数名の患者さんの痰に少量の血液が混じるなどの状況から、ホットバルーンカテーテル治療の安全性に疑問が投じられました。佐竹修太郎さんの考える安全性と、PMDAの考える安全性との間には大きなズレがあったのです。

 

バルーンは医療機器としては不完全とされ開発の大幅なやり直しが必要になってしまいました。さらに、二人三脚で歩んできた医療機器メーカーからさじを投げられてしまいました。

 

佐竹修太郎さんは諦めるどころか、自宅の裏庭にあった物置を改造し、一人でホットバルーンカテーテルを作り直すことにしました。さらに、単身アメリカに渡ってはカテーテル作りに必要な様々なパーツを特注したり、毎週のように秋葉原に足を運び電気系統の部品や工具を買いそろえていきました。

 

こうして私財と休日を費やすこと1年、ついに満足のいく手作りカテーテルが完成しました。そしてその試作機を知り合いのいる研究施設に持ち込み、実際に治療に使えるカテーテルへとアップグレードさせていきました。

 

2008年には臨床試験を再開。症例数は400例以上にも及び、その業績はアメリカの一流医学雑誌「CIRCULATION(サーキュレーション)」に掲載され一躍注目を浴びました。そして再び医療機器メーカーの強力を得て量産型のホットバルーンカテーテルが完成したのです。

 

2015年9月29日、ホットバルーンカテーテルはPMDAの審査を正式に通過しました。

 

「たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学」
奇跡の手術で患者を救う名医SP

この記事のコメント

  1. High Mount Nine Mama より:

    すでにホットバルーンと対極のクライオバルーンは冷却して組織を凍傷にして同じ効果をなす手技がスタートしてます。ホットバルーンは町工場ではなく、大手の東レがやっています。血栓は暑くすると発生しやすい予想があり、冷却した方が効果が期待できるとの見解も…。
    ホットバルーンの良いところはバルーンの形が変わる為、組織に密着するかもというくらいてすね。もうすでにクライオバルーンの高評価があり、世界ではあまり、期待されていません。

  2. tera より:

    親族がホットバルーンの手術を受けたが翌日から不整脈の波形がでるようになってしまい、以後は薬を飲み続けることになった。病院からは、手術室で波形が正常になったことをもって成功といい、翌日以降不整脈の波形がでても失敗ではない旨の説明があった。上記の「約90%以上と治療効果の大幅な改善」は、手術翌日以降の再発はカウントしていないのではないか。テレビでの手術は1例の成功を紹介されていて、手術をすれば成功するイメージしかもてませんでしたが、テロップ等で手術翌日以降の完治した確率を流してほしかったです。