細胞技術が毛髪再生を変える|サイエンスZERO

NHK・Eテレの「サイエンスZERO(サイエンスゼロ)」で細胞技術が毛髪再生を変えるが放送されました。全国で800万人が気にかけているという薄毛ですが、その治療法が変わろうとしています。毛を作る場所は1cmにも満たない大きさですが立派な臓器です。それを再生させる鍵は生き別れた2種類の細胞の出会いでした。

 

薄毛の正体は!?生えて抜けるメカニズム

毛包は髪の毛の製造工場です。毛髪工場は大きく2つに分かれています。メインの部分は毛包、司令塔は毛乳頭細胞。毛乳頭細胞は毛包の中の毛母細胞を刺激して細胞分裂を促します。すると古くなった細胞が押し出され髪の毛が伸びていきます。ではなぜ薄毛になってしまうのでしょうか?

 

毛周期とは毛の生え変わりの周期のこと。毛周期には成長期(2~6年)、退行期(3~4週間)、休止期(1~2ヶ月)の3つがあります。薄毛はこの毛周期が乱れることにあります。原因の多くは男性ホルモンです。男性ホルモンが酵素の働きで毛周期に影響を与える良くない男性ホルモンに転換された影響で毛母細胞の分裂を抑える指令が出てしまうのです。そして細胞分裂が衰える退行期が早く始まるので毛周期が短くなってしまうのです。実際に薄毛の人の髪の毛をよく見てみると産毛みたいな毛が沢山生えています。

 

開発中!司令塔を元気にする治療とは?

資生堂リサーチセンターでは細胞技術で抜本的な改善を狙う新しい治療法の開発が進められています。プロジェクトのリーダー岸本治郎さんたちが注目しているのは毛包の中の毛球部毛根鞘細胞の働き。毛球部毛根鞘細胞は毛乳頭細胞を包み込んでいて、やがて毛乳頭細胞になる若い細胞だと考えられています。毛球部毛根鞘細胞が毛乳頭細胞を活性化させ毛の成長期を伸ばす鍵だと言います。

 

治療の方法は一般的に髪の毛が残りやすい後頭部から毛包を採取し、毛球部毛根鞘細胞を培養し増やします。そして頭皮に戻します。すると毛球部毛根鞘細胞が毛乳頭細胞を活性化。成長期が伸びて毛が増えるはずです。岸本さんたちは医療機関と臨床研究を進めながら2018年の実用化を目指しています。しかし、この方法は毛包が残っている人にだけ適用できる方法です。そのため、さらなる革新的な方法が研究されています。

 

2つの細胞の出会いで毛包が生まれる

理化学研究所・多細胞システム形成研究センターの辻孝さんはマウスに画期的な方法で毛を生やさせました。辻さんが注目したのが2種類の細胞。毛乳頭細胞とバルジ領域にある上皮性幹細胞です。この2種類の細胞は受精の後に別々のグループに生き別れた細胞です。辻さんは2種類の細胞が高い密度で接することが出来る状態を作り出し培養。それを毛のないマウスに打ち込んだところ3週間程で毛が生えてきました。今、辻さんは人の細胞でも実験を進め10年以内の実用化を目指しています。

 

無限に増やせるiPS細胞での毛包再生

ヒトiPS細胞を使った毛包の再生に取り組んでいるのは皮膚科医の大山学さんです。まずターゲットにしたのはケラチノサイト。皮膚を構成する上皮系の細胞です。この細胞を誘導するにはiPS細胞にレチノイン酸とBMP4を加えればいいことが分かっています。ケラチノサイトは上皮系細胞なので、間葉系の細胞を出会わせれば毛包が生まれるかもしれません。しかし大山さんはケラチノサイトが完全に出来上がる前の途中の細胞を使うことにしました。そして未熟な上皮系細胞と間葉系細胞を混ぜ合わせ、マウスの皮膚の下に注入。すると毛包を含む構造が再現されました。わずかですが皮膚の中では毛が出来ていました。