世界牛肉争奪戦|NHKスペシャル

NHK総合テレビの「NHKスペシャル」で世界牛肉争奪戦について放送されました。中国では増え続ける牛肉の消費に国内の生産が追いつかず輸入を急激に拡大させています。あまり牛肉が食べられていなかった地方都市でも消費が拡大しています。日本の商社が高い値段で牛肉を買うようになった中国に競り負けることもあります。思うような値段で牛肉を調達できない買い負けが起きています。牛などのエサとなる大豆でも争奪戦は過熱しています。ブラジルでは広大な農地が開拓され大豆の増産が進んでいます。農家が圧倒的な出荷量で価格交渉の主導権を握ろうとしています。中国の牛肉輸入拡大を引き金に今世界で何が起きているのでしょうか?

 

日本は牛肉の約6割を輸入しています。日本が輸入する牛肉の1割を扱っている双日食料はこれまでアメリカの大手食肉加工会社と太いパイプを築くことで牛肉を安定して輸入してきました。ところが、これまでと同じようには買えない事態が起きています。中国が双日食料より高い値段を提示したため買い負けしてしまったのです。なぜ買い負けが起きているのでしょうか?

 

日本の牛肉の消費量はここ10年余りほぼ横ばいですが、中国は消費が伸び続け2014年にはヨーロッパと肩を並べました。中国は旺盛な消費をまかなうため牛肉の輸入をここ5年で6倍に増やしています。中国は牛肉の輸入量を大きく伸ばすことで国際市場での存在感を大きくしています。牛肉が高値でも売れると見込んでバイヤーは輸入価格を上げても買い付けようとします。これが日本の買い負けを引き起こしていたのです。中国が海外の取引先に対して強い交渉力を持つ輸入方法もあることが分かってきました。

 

中国は牛肉を丸ごと輸入しています。オーストラリアの業者にとって肉を丸ごと買ってくれれば売れ残りの心配がありません。日本はほとんどの場合、ショートプレートをはじめ必要な部位だけ調達する方法をとっていますが、業者にとってはそれ以外の部位が売れ残るリスクがあります。丸ごと肉を売り肉があまるというリスクをなくす中国の輸入方法は売り手にとっては有難い存在となり交渉力を上げています。

 

中国を震源として牛肉以外の食品でも様々な変化が起きていることが分かってきました。北海道で庶民の味として親しまれてきたジンギスカンが値上がりしているのです。ニュージーランド産とオーストラリア産の羊の肉の仕入れ価格が1年で3割も上がったと言います。人間より羊の数が多いと言われてきたニュージーランドですが、牛の放牧への転換が起きています。牛を育てた方が儲かると考える農家が増えてきたのです。ニュージーランドから中国への乳製品と肉の輸出額は1年で約8割増えました。

 

中国で進む牛肉の消費拡大の影響は私たちの暮らしに欠かせない大豆にまで及んでいることが分かってきました。中国は世界から膨大な量の大豆を輸入しています。中国は牛肉の輸入に頼るだけでなく国内で牛を育て牛肉を大量に生産しています。エサとなる大豆も増産する必要がありますが国内の農地ではまかないきれません。かつては世界一の大豆輸入国だった日本。中国が大豆の輸入を増やし始めたのは1990年代後半。輸入量は今、日本の20倍を超え年間7000万トンに達しています。アメリカの穀物メジャーは中国向けの輸出を急速に伸ばしたため、日本が大豆を買い付ける条件は厳しくなっています。危機感を募らせる日本の商社が注目しているのがブラジルです。ブラジルの内陸部セラートでは広大な大豆畑の開発が進んでいます。

 

世界の大豆取引に影響を与えるシカゴ先物市場では2000年以降、大豆の価格は激しく乱高下しながら上昇しました。需要と供給のバランスだけでは説明できない値動きだと見られています。こうした値動きの裏で何が起きているのでしょうか?投資家スタンレー・ハー氏によると価格を乱高下させているのは新たな金融商品インデックスファンドだそう。インデックスファンドは先物市場で扱う大豆や小麦などの値動きと連動する金融商品です。証券会社などで扱われていて多くの投資家から資金を集め先物市場で運用。これまで資格を持つプロの投資家が資金を運用してきた先物市場ですが、新たなマネーが流れ込むようになったのです。インデックスファンドは世界の金融の中心ウォール街で作られました。リーマンショックの後アメリカや日本などで行われた金融緩和によって世界にあふれたマネーが流れ込んでいると見られています。インデックスファンドに対して規制を強化すべきだと言っているのは小麦の値段が吊り上げられたと主張するパン生産者の業界団体です。これに対し金融機関の業界団体は規制を強めると返って市場が混乱すると反論しています。

 

牛肉や大豆などの消費拡大を受けて世界各地で農地の開発が加速しています。オーストラリアの乾燥地帯で巨大プロジェクトが動き始めました。農業に欠かせない水は海水を淡水化して供給します。プロジェクトに投資するのは大手投資ファンドKKRです。

 

中国の牛肉の消費拡大をきっかけに進む食の異変。世界を巻き込んだ激しい争奪戦は今日も私たちの見えないところで繰り広げられています。