赤ちゃんのヒミツ ~驚くべき生命力~ |地球ドラマチック

NHK・Eテレの「地球ドラマチック」で赤ちゃんのヒミツ~驚くべき生命力~が放送されました。近年、赤ちゃんの研究が進み小さな体の中で起きていることが徐々に解明され始めています。赤ちゃんには大人にはない特別な能力があります。順応性にも優れています。赤ちゃんは生まれてから2歳までの間に他のどの時期よりも成長し学びます。一生のうちで最も大切な期間なのです。しかし、多くの人はその頃のことを覚えていません。私たちみんなが体験し記憶にはない赤ちゃんの世界をのぞいてみましょう。

 

生きるための本能

母親のお腹の中で守られてきた赤ちゃんは生まれた途端に全てが変わります。産声と共に始まる赤ちゃんの初めて呼吸。酸素を取り込む場所が胎盤から肺へと移行する瞬間です。小さな体に起こる目に見えない変化を経て赤ちゃんは成長していきます。生まれたばかりの赤ちゃんはか弱く見えますが、小さな手足はかなり強い力で握ることができます。これは本能的な反応で把握反射と呼ばれています。人間がサルだった頃の名残かもしれません。赤ちゃんは本能的に人の顔を探します。生まれてから20分もすると相手の表情を真似るようになります。おっぱいを探すのも生きるために欠かせない本能です。ほんの少し頬に触れただけで唇をすぼめ、おっぱいを探します。

 

泣き声を使い分ける

赤ちゃんは泣くことで自分の意思を伝えることもできます。赤ちゃんの泣き声は声色も高さも周りの注意を引くように完璧に調整されています。どのように泣き始めるかで何を求めているかが分かる場合もあります。疲れてむずかっている時は口を大きく開けるため「あー」という音で泣き始めます。一方、おっぱいが欲しい時は舌が口の上の方にくっつくため「ねぇ」という音から始まります。

 

特別な呼吸の仕組み

赤ちゃんはおっぱいを飲みながら同時に呼吸をすることも出来ます。気道の一部が大人よりも高い位置にあるからです。空気は鼻から肺へ、ミルクは口から胃へ混ざり合うことなく届けられます。この仕組みのおかげで赤ちゃんは泳ぐ能力を手にしました。赤ちゃんは練習をすれば泳ぐことが出来ます。これは赤ちゃんに備わった能力の一つです。水の中に入ると赤ちゃんは反射的に鼻での呼吸を止めます。口を大きく開けても胃や肺に水が入ることはありません。這ったり歩き始めるずっと前から赤ちゃんは本能的に手足で水を蹴ります。母親のお腹の中と似ているからかもしれません。ただし、空気を吸えるよう大人が水から出してあげる必要があります。この能力が赤ちゃんの命を救うこともあります。

ケイト・クーパーの息子サムは生後6ヶ月の時に海に落ちました。6分間も水の中にいたサムは助けられたものの瀕死状態でした。しかし無事に回復。事故から1年、サムは1歳半になりましたが、身体的にも精神的にも事故の後遺症は見られません。これが大人だったら助からなかったでしょう。肺に水が入らない仕組みになっている赤ちゃんだったことがサムが生き延びた理由の一つです。また極端な寒さもサムの復活を支えた理由でした。水中では酸素を取り入れられないため脳細胞が死に始めます。しかし厳しい寒さではそのスピードが遅くなります。赤ちゃんの場合、大人よりもさらに遅くなるのです。この特性は新生児の集中治療の技術に応用されています。赤ちゃんの体温を下げて脳の損傷を防ぐのです。

 

かわいさも戦略!?

赤ちゃんには常に世話をしてくれる大人が必要です。大人は赤ちゃんのかわいさの虜になります。可愛らしさは赤ちゃんにとって生き延びるための最大の武器です。大きな瞳に愛らしい口と鼻、広いおでこ。その姿を見ただけで心が和みます。ペットは赤ちゃんのこうした特徴に似るように進化したと言われています。人間がペットを無条件に受け入れ世話をしようと思うのは赤ちゃんに似ているからなのです。

 

焦点は20cm先

赤ちゃんは周りの世界をどう思っているのでしょうか?生まれてから2ヶ月間は赤ちゃんは周りの状況を理解するのに必死です。赤ちゃんの視界は二重になってぼやけていると研究者たちは考えています。まだ両目でとらえた情報を脳で一つにまとめることが出来ないからです。目の筋肉が強くなるまで赤ちゃんの目の焦点が合うのは顔から約20cmのところだと考えられています。これは赤ちゃんが母乳を飲む時にちょうど母親の胸がある場所です。大人が赤ちゃんに話しかける時に前かがみになったり、おかしな顔をすることで赤ちゃんの視界のズレは解消されているのかもしれません。

 

原色だけを認識

赤ちゃんは明るくてハッキリした色のおもちゃを好みます。中には大人の目には刺激が強すぎるようなものも。これは赤ちゃんの目がコントラストのハッキリしたものによく反応するからです。赤ちゃんは色彩感覚が十分ではありません。そのため最初は鮮やかな原色だけを認識します。微妙な色の違いを認識できるようになるまでには数年かかります。

 

音にはエコーが

一方、赤ちゃんの聴覚はかなり発達しています。生まれた時には内耳はすでに完全な状態です。お腹の中で聞いていた音も分かり母親の声も認識できると考える研究者もいます。しかし、両耳から入ってくる音のわずかなズレを脳が処理できるようになるまでは、どんな音も小さなエコーがかかったように聞こえます。大人が高い声で同じ言葉をゆっくりと繰り返しながら話しかけると赤ちゃんが聞きやすくなると考えられています。

 

車のエンジン音が好き

赤ちゃんはかなり大きな音も平気です。お腹の中では母親の心臓の音が約90デシベル、スポーツカーのエンジン音と同じくらいの音量で響いていたからです。

 

脳は眠らない

生まれてから3ヶ月の間、赤ちゃんは1日に約16時間寝ます。しかし、脳は眠っていません。赤ちゃんは大人の2倍近く夢を見ることが分かっています。夢を見ることでその日体験したことを脳が分析しているのです。また赤ちゃんの眠りは大人ほど深くないことも明らかになりました。眠っていても音を聞き、周りにいる人の気配を感じ取っています。赤ちゃんが眠るのは夜とは限りません。しかも眠りは長くは続きません。赤ちゃんにはそもそも暗くなったら寝て朝になったら起きるという感覚がないのです。しかし絶えず押し寄せる新しい情報を脳が処理するには睡眠が欠かせません。

 

未完成な脳

赤ちゃんの時に経験したことは全て脳の形成に影響を与えます。脳が発達していく過程で赤ちゃんが不思議な反応を示すことがあります。赤ちゃんの脳の一部が異常な動きをするためです。大きなサイレン音を聞いた赤ちゃんはそれを指先で感じているのかもしれません。電光掲示板の明るい光を見て鼻で感じ取ったかもしれません。こうした反応は脳の各部分の役割がまだ定まっていないことが原因で起こります。一見、弱点のように思われますが実は赤ちゃんの脳がどんな状況にも適応できることを意味しています。

 

順応性の高い脳

脳の順応性が大きな困難を乗り越えさせたケースもあります。トーマスは生後3ヶ月の時に重いてんかんと診断されました。1日に100回もの発作を起こすため両親は片時も目を離せませんでした。検査の結果、トーマスの脳は腫れ上がり片方が歪んでいることが分かりました。薬では発作を抑えられなかったため手術で脳の一部を切除することになりました。赤ちゃんの脳は生まれて間もないほど順応性があります。脳の一部を切除したあと、残った部分をうまく機能させるには一刻も早く手術する必要がありました。トーマスはすぐに手術を受けました。トーマスは脳の半分を失い後遺症が少し残りました。しかし、もし大人の患者がトーマスのように脳の一部を失ったとしたらずっと深刻な結果になっていたはずです。手術以来、トーマスの発作はおさまり一家の生活は大きく変わりました。今、トーマスは同じくらいの年代の子供と変わらない発達を見せています。これからは穏やかな生活を送れるでしょう。

 

大人より多い骨

柔軟な脳で周りの世界を理解し始めると赤ちゃんは次のステップに踏み出します。周りのものを探り始めるのです。この頃から赤ちゃんは様々な動きをし始めます。触る、食べる、這う、歩く、こうした動きを可能にするのが骨です。赤ちゃんの骨は大人よりも柔らかく、数も0歳では約100個、2歳でも約70個多くあります。例えば頭の骨は狭い産道を通れるように5枚にわかれ変形できるようになっていますが、成長と共につながります。手首や足首などの骨は生まれた後に現れてきます。新生児には膝小僧もありません。膝の軟骨が骨になるのは数年後。転んだり歩く練習などの刺激を受けることで形成されます。

 

はやい成長

赤ちゃんは驚くほど速く成長します。体重は1年で約3倍に。身長は約1.5倍になります。急激な成長には莫大なエネルギーが必要です。それを支えるのが母乳です。母乳に含まれる脂肪は赤ちゃんの脳の成長に欠かせません。電線を覆うゴムのように新たに結合した脳細胞を包み守ります。しかし、次第に母乳で得られるカロリーだけでは足りなくなります。生後6ヶ月の赤ちゃんは大きさは大人の10分の1ですが、必要とするカロリーは大人の3分の1です。離乳食を食べ始める時期、赤ちゃんはカロリーの高い甘いものを好みます。苦いものは生まれつき苦手です。母親が妊娠中に食べていたものは赤ちゃんも好きなようです。間もなく赤ちゃんは何でも口に入れるようになります。赤ちゃんの手の届かない所にモノを移動する必要がある時期です。食べ物で遊ぶのは親にとって悩みの種かもしれません。しかし、最近の研究から赤ちゃんは汚く食べ散らかすほど学ぶのが速いことが分かってきました。固体か液体か、あるいはその中間か、区別する訓練になるためです。

 

学習する危機

周囲を探索する時期は危険と隣合わせです。触っても安全かどうかは試行錯誤しながら学んでいきます。しかし、中には本能的に避けるものもあります。多くの赤ちゃんは植物を嫌います。毒やトゲのある植物から身を守るための進化の結果だと考えられています。子供に葉物野菜を食べさせるのが大変なのもこれで説明がつくかもしれません。しかし生まれたばかりの赤ちゃんは動物を恐れません。何を恐れるべきかは経験や大人から学んでいくのです。

 

好奇心と行動力

旺盛な好奇心によって赤ちゃんは生後9ヶ月くらいになるとさらなるステージに踏み出します。這うことを始めるのです。赤ちゃんは大人を真似ることで多くのことを学びます。しかし這うことは別です。大人が這う姿は滅多に目にしないため、どう這うかは自分で考えなくてはいけません。そのため初めて這う時には様々なスタイルが見られます。多くの赤ちゃんは1歳をむかえるまでに標準的な這い方を覚えます。そして2歳になる頃には移動距離はのべ100km以上にも達します。自由に動けるようになった赤ちゃんは危険なことをしかねません。落ちたら死んでしまうような高い場所にも這っていきます。しばらくすると慎重になることを覚えます。理由は分からなくても安全と思えないものは避けるようになるのです。赤ちゃんはそれぞれのペースで座り、這い、歩きます。筋肉が増え、骨が硬くなってくるといよいよ足で立つ時がやってきます。そして一歩あるき始めるともう後戻りすることはありません。初めはうまく歩けず転ぶことが多くても足で動きたいという欲求は止まりません。それはどんな状況でも変わりません。

 

欲求が引き出す能力

ジョージーは11週早く生まれたため、しばらくの間病院に入院していました。そして1歳になる頃、脳性麻痺と診断されました。それが原因で足が硬くなり、体が硬直して動きづらくなっています。両足で立ちたいという生まれながらの欲求は簡単に抑えられるものではありません。母親のクレアは水の力を借りればジョージーの歩きたいという欲求を叶えられるかもしれないと助言を受けました。水の中だと普段は硬い筋肉も柔らかくなり動こうという気持ちに体が素直に応じます。そしてプールに通い始めて2ヶ月、ジョージーは立てるようになりました。

 

歩くメカニズム

イギリスのオックスフォード大学の研究施設では赤ちゃんの歩き方について研究しています。赤ちゃんの動きを細かくデータ化することで赤ちゃんがどのように歩いているか調べています。研究から赤ちゃんがよちよち歩きをするのは体のバランスをとるためだと分かりました。酒に酔った時のちどり足と少し似ています。やがて赤ちゃんは歩くことに慣れ、行動範囲を広げていきます。

 

自我の目覚め

将来、大人の世界で生きていくにはもう一つ身につけなければいけない大切な能力があります。コミュニケーション能力です。最新の研究から赤ちゃんは大人が思う以上にコミュニケーション能力を持っていることが明らかになってきました。2歳頃までは体の動かし方を覚えるのに精一杯のように見える赤ちゃんですが話すための準備も着々と進めています。赤ちゃんは母親のお腹の中にいる時から声を聞いていて、生まれてすぐに母親や家族の声を聞き分けられると考える研究者もいます。赤ちゃんのコミュニケーションは泣くことから始まります。やがて、より疲れない方法でコミュニケーションを取るようになります。笑顔です。赤ちゃんがニッコリ笑顔を見せるのは本能によるものです。じきにクスクス笑ったり声を出して笑ったりするようになります。赤ちゃんは1日に約300回微笑みます。しかし人生は楽しいことばかりではありません。1歳半頃になると赤ちゃんは人生最大の発見をします。自分です。鏡に写る自分の姿を認め自我に目覚めると、やがて難しい局面が訪れます。癇癪です。世界が自分を中心に回っていると信じてきた赤ちゃんは次第に他人の気持ちをおしはかることを覚えます。人生において大切な能力です。

まだオムツをしている赤ちゃんでも大人のようなふるまいをすることがあります。赤ちゃんは生後3ヶ月ですでにいろいろなタイプの人間がいることを認識します。自分の助けになってくれる人には報いようとし、もう少し成長すると助けてくれない人を懲らしめようとすることもあります。人の気持ちを理解し慰め、苦しみを分かち合おうとします。

 

あらゆる言語を習得可能

言葉を話せるようになる前の赤ちゃんでも周りの状況をかなり理解していることが最近の研究から分かってきました。子供が言葉を覚えるのが速いことは分かっていますが、どうやって覚えるのでしょうか?大人は母国語を構成する音しか認識できませんが、生後半年の赤ちゃんは世界中の言語を構成するあらゆる音の違いを聞き分けると言われています。赤ちゃんはどんな言葉でも覚えられるように生まれてくるのです。言葉の習得は音ではなく形から始まります。赤ちゃんは言葉を覚える時に大人の口を見て、それをゆっくりと自分の口で真似します。一つの単語を話すだけでも70以上の筋肉を正確に動かすことが必要です。初めはきちんとした言葉にはなりませんが、抑揚をつけて大人の会話を真似ます。赤ちゃんの発する声が実は意味をなしているかもしれないことが研究によって分かってきました。

 

話せなくても周囲を理解

2歳になったばかりの双子のフィンとエラはよく2人でコミュニケーションをとっています。声ではなく手話を使っています。2人の両親は耳がほとんど聞こえません。そのため2人も自然に手話を使うことを覚えました。赤ちゃんは実際に話せる3倍もの言葉を理解しているという研究結果もあります。話すことを覚える子供と同じように2人は手話を見て真似、徐々にそれを繋ぎ合わせていきました。2人は今、言葉を声に出してコミュニケーションをとることも学んでいます。2人は多くの赤ちゃんが話せるようになる前にコミュニケーションをとる方法を覚えました。話せるようになる前でも赤ちゃんは多くのことを理解しています。大人は言葉には注意した方が良いかもしれません。

 

単語だけだったのが文章を話せるようになると赤ちゃんの生活は一変します。感じていることを言葉で直接伝えられるようになるからです。個性があらわれて視野も広がり本当の意味での人生が始まります。

 

SECRET LIFE OF BABIES
(イギリス 2014年)

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