超能力は実在するのか科学は証明できるのか?|幻解!超常ファイル

NHK総合テレビの「幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリー」で超能力は実在するのか?(2)科学は証明できるのか?が放送されました。超能力を証明しようという科学の取り組みがアメリカ・ノースカロライナ州にあるライン研究センターで行われています。超心理学を専門とする世界にも類のない学術組織です。設立者はジョゼフ・バンクス・ライン。超能力を科学的に研究する手法を打ちたてようとした近代超心理学の父です。1920年代、ラインは霊媒という人々が手を触れずにモノを動かし見えないものを透視する現象について検証実験を行おうとしました。しかし当時の霊媒たちは科学者が用意した厳密な実験に対して「これでは力が発揮できません」と要求。不正が入りやすい方法に変えさせたり、科学で重要な他の人で試しても同じ結果が出るという再現性を求めようにも特殊な能力を持つ本人以外では再現不可能。また見えない場所の絵や風景を透視したという場合、一致しているかどうかの判断が微妙で客観的なデータが取れなかったりしました。ラインはこれまでの特殊な能力者による実験では科学的な検証は困難だと悟り、全く発想が異なる方法を模索しました。そしてラインが打ち出したのが次の基本方針です。「同じ手法で実験すれば誰でも同じ結果が出るようにするため、霊能者ではなく一般の人を対象に実験を行う」「実験結果を客観的に判断するため数字を用いて統計的な評価を行う」ラインは人類が知覚や聴覚といった五感以外にも隠された未知の感覚があるのではないかと想定。超感覚的知覚(ESP)と名付けて科学的な実験に取り組みました。

 

1930年代、ラインが最初に始めたのがカードを使った実験でした。ゼナーカードには曖昧さを避けるためシンプルで区別しやすい図形が5種類描かれています。そして実験の方法も単純です。一般人の被験者2人が向かい合って座り、片方の人が次々とカードを見てその図柄を意識し、もう一人は直感的に思い浮かんだ図柄を答えるというもの。人と人が視覚とは異なる感覚でイメージを共有できるかどうか、その可能性について探ろうとしたのです。実験者は図柄が一致したかどうか丁寧に記録。こうした実験の回数を重ねて統計として客観的に判定が出来るようにするのです。さらにラインは実験の厳密性も追及。被験者が相手の表情や仕草から図柄を推測する可能性を防ぐため、2人の間に衝立を立て、不正が行われないように第三者の立ち会い人をおいて実験を監視したのです。また実験前にカードを人の手で混ぜると偏りが起きるかもしれないのでシャッフルマシンも用意しました。10年間、90万回を超える実験で図柄が一致した率は約21%。5種類のカードで偶然当たる確率20%をわずかながら上回ったことで未知の感覚の可能性が浮かび上がりました。科学的な実証を目指すラインの方針を受け継ぎ、その後も様々な実験方法が生み出されていきました。

 

中でも1974年に開発され当時厳密さにおいて画期的と呼ばれた実験があります。それは離れた場所にいる2人の被験者が意識を共有できるかどうかテレパシーについて専用の設備を使って行う実験です。その名はガンツフェルト実験。開発者のチャールズ・ホノートンはライン以降もっとも優秀と称された超心理学者。10mほど離れた2つの部屋に、それぞれ被験者が入りテレパシーの送り手が見た画像を受け手が共有できるかをテスト。被験者や条件を変えながら実験回数を重ねていきました。ガンツフェルト実験の特徴は厳密さをきすための徹底した管理体制。まず2つの部屋は一切外部と連絡が取れません。完全防音の上、電磁波さえも遮断。テレパシーの受け手はピンポン玉を割ったもので目を覆い視界を均一な薄暗い状態にし、ヘッドフォンからはノイズが流れ聴覚も遮断。一方、テレパシーの送り手が目で見てイメージする画像は全く異なる印象の48枚が、12の封筒に分けて用意されています。そこから偏りが起きないようにするためサイコロを振り、出た目に従って1つの封筒を選び、もう一度サイコロを振り封筒の中の4枚の絵のうち1枚を選び出します。送り手は選ばれた絵を見ながら、そのイメージを頭の中に思い浮かべます。15分後、受け手は他の3枚の候補と混ぜられた絵を見て、浮かんだイメージに近いものを選びます。ガンツフェルト実験は800回以上実施され、正解率の平均は35%だったと言います。4枚から選び偶然当たる確率25%を大きく超えました。ついに科学はESPを証明したのでしょうか?

 

しかし、ここから超能力研究の歴史を動かす大論争が始まりました。批判の声を上げたのはオレゴン大学心理学のレイ・ハイマン名誉教授です。ガンツフェルト実験は、あらゆる段階で人が関わるため何らかの偏りや誤りが起きているのではないかと指摘したのです。実験の際に送り手は絵の描かれたカードを持ち見つめ続けます。カードに手が触れることで意図せず、何らかの痕跡を残す可能性があります。これでは受け手がカードがどれか分かってしまう可能性があるのです。またカードを手で混ぜたりサイコロで選んだのでは人為的な要素が入り、本当の無作為ランダム化とはみなされません。ハイマンからの批判をホノートンは積極的に受け止め、ハイマンと話し合って実験の問題点を洗い出し、さらに厳密性を高めた手法を生み出しました。それが、あらゆる段階にコンピューターを導入したオート・ガンツフェルト実験です。最初に絵を選んで送り手に見せるところから、最後に判定するところまで全てコンピューターが無作為に行います。またカードを持つ痕跡が残るという批判を受け、映像をモニターに映し出す方法に改めました。このオート・ガンツフェルト実験は15の研究チームが2832回の実験を行い、正解率は31%だったと言います。しかしハイマンは今も批判者の立場から現在の実験は科学の手法にのっとっていないと訴え続けています。